エピソード11
 七月四日陰独立記念日。
インディペンデンス・デイの夜、ベイエリアでは、それを祝う花火があちこちであがる。


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 本来ならこの独立記念日のホリデイは、お猿はフレッドと過ごし、私はメイのパーティでクリスが誘ってくれた彼のファミリーバーベキューへおよばれの予定だった。

しかし当日の朝、お猿の用意も整ってフレッドのお迎えを待っていた所に、相変わらず気分屋の彼から突然のキャンセルの電話が入って来た。

この土壇場の予定変更‥。お猿には悪いが私は困った。

それならそうと、フレッドももう少し早めに連絡をくれていたなら、こちらも前もってベビーと一緒に楽しめるホリデイプランをたてる事が出来ていたものを‥。今さらクリスのパーティーには、家族も集まる、増してや初めてのおよばれに、まさかまさかの小さなベビーをつれて行くわけにもいかない。
普段からお互いの生活のスレ違いでそれ程頻繁に会うことも出来ない久し振りのクリスとの約束。楽しみにしていた予定がこうしてまた潰れて行く。

色んな思いがごちゃ混ぜになって、沸点に達したアドレナリンが頭の中で炸裂しそうな思いの中、‥しかしまあ、何時までそうして嘆いていても状況が変わってくれるわけではない‥。泣きたい気分をぎゅっと押さえてクリスのクリニックの番号を押した。

 

 「それなら、フィッシャーマンズ・ワーフの花火大会に行こう。」

沈んだ私の声を遮るように、電話の向こうからは、クリスの弾んだ声がかえってきた。

「今日のバーベキューは、ママの友達も集まって大人中心のパーティーになるからね。ね、それならいっそバーベキューは彼等に任せといて、僕達はベビーを連れて三人で花火大会を見に行こうよ。」

思わぬ話の展開に、とっさに返す言葉が浮かばない。その一瞬の沈黙に、クリスの声のトーンが下がった。

「会いたいんだ‥。」

微かにかすれた声が、受話器を通して耳に響いた。

クリスのまっすぐな言葉に落ち込んでいた気分も吹き飛んで、息も止まるようなあったかな感覚が身体中の毛穴から湧き出て来る。‥しかしその裏でジンワリ、すまない思いも沸いて来た。

「家族とのバーベキューなんて何時でも出来るけど、フィッシャーマンズ・ワーフの花火大会にキュートなレディーを二人もエスコート出来るなんて、こんなチャンスはめったにあるものじゃあないからね。」

私の懸念をキャッチして、電話の向こうからはすぐにクリスの『ノー・プロブレム』と戯ける様子が伝わって来た。弾んだ声が心の負い目を吹き飛ばす。

「クリニックの仕事が終わって、五時には迎えに行くよ。寒いからね。ベビーに沢山服着せて待ってて。」

 

 五時きっかりに、クリスのお迎えを告げる部屋のインターフォンが鳴った。
大きなカーシートと、ベビー御用達品がパンパンに詰ったママさんバックを両手に抱え、その上にお猿を乗せたストローラーを押しながらロビーまで下りて行くと、

「ハイ、ママサン!」

勇ましい私の姿にウインクをしながら、車の外で私達を待っていたクリスが戯けてドアを開けてくれた。

 

 フィッシャーマンズ・ワーフに着くと、さすがに今日は蟹のバケツをひっくり返したようなお祭り騒ぎで人が溢れ返っていた。普段はただ、海に面してのんびりとした時間が流れる芝生の公園が、今日は見渡す限りの人・人・人の頭で埋まっている。ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, フィッシャーマンズワーフ花火、花火、独立記念日

そんな公園の小道をクリスと二人、お猿のストローラーを押しながら、人ごみの中を満員電車にゆられるようにゆっくりゆっくり進んで行く。
人の流れにのって、これまた人がひしめき合って腰をおろしている芝生の観客席までやって来ると、そこでは日本のお花見よろしく、早い時間からシートを広げて場所を確保していた人たちの姿もちらほら見えた。

芋を洗うように混合うシートの隙間に何とか二人と半分が坐れる場所を確保すると、まずはお猿のストローラーをどんと置き、後はその横に空いた一人と半分のスペースに、クリスとぴったり身体を寄せ合って腰を下ろした。
ここまで来ると一安心。
後はビールを取り出して、ショーが始まるのを待つだけだ。

空気が少し冷えて来た。
いつもは近い海岸線が今日はやけに遠くに見える。
青い海をバックに組まれた巨大な野外ステージから響く大音響のロックのリズムが、ショーが始る幕前の会場の雰囲気をブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, フィッシャーマンズワーフ花火、花火、独立記念日盛り上げている。

ほどなく日が落ち始め、辺り一面の風景が黄金の光に染まって来た。

‥とその時、ふいにドラムが合図を打ち、ステージの上からボーカルが群集に向かって何か大声で声をかけた。
それをキューに、そこら中に座り込んでいた数えきれない人の山が一斉にステージに向かって立ち上がる。
間を置かずしてアメリカ合衆国の国歌が流れ、皆がひとつになって斉唱を始める。

さすがにスピルバーグを産んだアメリカン・ショー・ビズの世界。
セピア色に輝くスクリーンの中で、そこにある全ての物たちがこうして一瞬にして一枚の素敵な絵を描き出す演出のクールさには、もうただただ感動の一言!

 

 辺りの景色が闇に沈み、遠くのレストランの窓に柔らかな明かりが灯される頃、目の前に広がる暗い海に一発目の花火が打ち上げられた。

耳を劈く炸裂音と共に、ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, フィッシャーマンズワーフ花火、花火、独立記念日強烈な歓声や口笛があちこちにこだまする。

それまでストローラーのベルトを止めたり外したり勝手な事をやって遊んでいたお猿も、突然頭の上に飛び散った色とりどりの光の粒に驚いたようだ。
急いでママの膝によじ登ると、それからは大人しく腕の中で、次々に上がり続ける花火にその小さな手をパチパチ夢中でたたき続けた。

日が落ちた後の海岸線は、指先がしびれる程に冷え込んで来た。
もう七月に入ったというのに、海から吹く凍り付く風に、鼻先が凍え目に涙が潤んで来る。

「ハ‥‥クシュン!」

思わずクシャミが出た瞬間、私の身体は腕に抱いたお猿ごと、ふうわりと大きな腕に包まれた。

パン・パ・パパーンッ‥パ・パ・パ‥!

花火が打ち上げられる度に、辺り一面明るく昼間のように照らされる。
鮮やかな閃光を放つ光の模様たちが空のスクリーンの上で軽快なリズムにのりながらダンスのショーを織り成していく。

腕の中のお猿の柔らかい髪の毛がモゾモゾ鼻に触れてくすぐったい。
トクン‥トクン‥。クリスの心臓の音が耳に響き、幸福な温もりのサンドイッチで、今まで凍り付きそうだった頬がほかほか溶けて行くのを感じた。

ゴールデンゲートブリッジの向こう側では、マリーンの花火があがるのが見える。
湾を挟んで競い合うように上がる花火を見ていると、ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, フィッシャーマンズワーフ花火、花火、独立記念日日本で行った下関の花火大会の風景が頭を過った。

浴衣、屋台、むせ返るような人々の熱気‥。
遠い遠い国の空。
全く異なる時間の流れの中で、今こうして同じ花火を見ている自分がいる。

『今頃、日本は早蝉の鳴き出す季節かしら?』

ふいにチュンと目頭が弾け、クリスの首に顔を埋めた。
そっと目を瞑ると、顔中の神経から柔らかな匂いと温もりが滲み込んで来る。
周りで炸裂する花火の音も、人々の馬鹿騒ぎも、過去の時間も何もかも‥、小さく小さくそこで脈打つ宇宙の中に溶けて行くような気がした。

 

 ショーがお開きになった後は、花火大会のお約束、また物凄い人の波にもみくちゃにされながら駐車場までのシャトルバスを捜した。
何しろ、ただでさえガタイのサイズの違うでっかいアメリカ人達の背中しか見えない『大海原』。お猿のストローラーに四苦八苦する私を見て、これまた目線が遥か高くにあるクリスが彼女の担当を変わってくれた。

ようやく大通りまで出て来ると、皆でオシクラまんじゅうをするように、押し合いへし合いシャトルバスに乗り込んだ。
クリスがひょいと、ストローラーの中から小さなお猿を抱き上げる。ベビー初心者の彼にとっては今日初めての『プレイ・ダディー』。なかなか新鮮な体験のようである。

言わずもがな、サンフランシスコはベビーにとっても優しい街。ベビーを一緒に連れていると、皆が親切に声をかけてくれたり、バスの混雑する車内でも先を争って席を譲ってくれたりする。

「今まで自分の人生の中で、人からこんなに優しい『待遇』を受けた事は無いな!」

今日、初めてベビーを抱いてバスにゆられてみた彼は、そんな周りの乗客たちの反応にしきりと感動しまくっていた。

帰りのシャトルバスの中では、偶然クリスの同僚のドクター夫妻に会った。
クリスが嬉しそうにその腕に抱いているお猿を見て、彼等は彼女をクリスのベビーだと勘違いした様子だった。

その時にはもうすっかり調子にのりまくりのクリス、別にそれを否定するわけでもなく『可愛いだろう?とってもいい子で、花火を見ても全然怖がったりなんてしなかったよ。』なんて、自分のベビーよろしく自慢話しなんぞ始めていた。

しかし、そこでアメリカ人のお約束、'how many months? と、ベビーの年を聞かれた途端、さすがの彼も『ウッ‥』っと答えには詰ったようだ。
シドロモドロの表情の中、思いっきり答えを本ママに振り、敢え無くシッポを出していた。‥お馬鹿なヤツ。

 

 瓢箪からポンッと駒が出た、今年のフィッシャーマンズワーフの花火大会。
来年もまた皆で来る事が出来たらいいな。

その頃にはまたこのサンフランシスコで、いったいどんなストーリーが展開していたりするのだろう。

 

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[2012/03/30 12:44] | エピソード | トラックバック:(0) | コメント:(0) | page top↑
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