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イントロダクション
 サンクスギビングのターキーレシピの話題でアメリカ中が盛り上がる頃、今まで予想だにしなかった『第二の人生』という物を、たった一人、突然に、サンフランシスコのダウンタウンの外れでスタートさせるハメとブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, 坂井浩子, ひろこ, hiroko sakai, hiroko, なった。

連れはまだ、産まれて七ヶ月のムシのような『お猿』‥失礼、ベビー、一人と半っきりである。


 日本にいた頃の私といえば、もう三十才を過ぎるまで、自爆霊よろしく産まれ育った福岡にとりついて、海外旅行のパスポートさえ取ることも無い生活を送っていた。 それなのに、今さらこの冗談のような話のスタートだ。まるで、バーチャルリアリティーの世界をライブで見ている心境だ。

まあ、考えてみれば、これまでの私の人生、大なり小なり、どこを切っても似たようなブラックジョークの連続だった。

何ぶんもともと整理整頓大苦手のやりっぱなし人間だったりする。
今まで、人生の整理についても無頓着にやって来た『つけ』が、ここで一気に開花したのだと思えば、この冗談の成りゆきも、自業自得で納得出来ないことはない。

「そら見たことか」と笑う日本の母親の顔が、目の前に浮かんで来るようだ。


 そもそも、何でよりによって、こんな間抜けすぎて、かえって人様に話しまくらずにはいられない素敵な人生のシナリオの白羽の矢が、この私になど当たってしまったのだろう?
出来る事なら、丁度季節もいい頃だし、商店街の年末クジの『ハワイの旅一週間御招待』くらいに置き換えてくれるととても有り難い。

‥しかし、いつまでこんな無駄話で逃避していても仕方がない。
ここらでそろそろ話の幕を開く事にしよう。

 

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 まず、月並みなスタートではあるけれど、何故今私がこんな所でこんな事をやっているのか?

その答えは、『アメリカ人と結婚したから』‥である。

ここまではよかった。うん。

しかし、たまたま結婚しちゃったこのアメリカ男というのが、何と、今流行りのアビューシブなヤツだったりしたわけで、私の初のアメリカンライフ『ドメスティックバイオレンス』などという、最先端の横文字環境の中で封を切られる事となった。

 

 あ、ここで、誤解の無いように申し上げておくけれども、私には決して変な趣味があったりするわけではない。

この『前夫』、今でこそ顔を見る度に、ヘビと何とかの三竦みよろしく妙な感情に取りつかされる男だけど、結婚前には全くの別人だった。
白人男の至れり尽くせりのサービスぶりで、『世界でこれ程優しくて、ロマンティックな男はいないわ』などと、今考えると、背中が痒すぎてひっくり返らずにはいられない錯覚を信じさせてくれるジェントルマンのはずだった。

‥その結果がこれである。

まあ、巷では、こんな間抜けな話などいくらだってありふれてたりするのだけれど、しかしそうは言っても、まさか、これ程の男の豹変振りを目の当たりにする機会が、ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, 迷える子羊よりにもよってこの自分の身の上に降り掛かる事になろうとは‥。

神の公平さというのも、時にはありがた過ぎてはた迷惑なものである。

まあそれも、結局迷える小羊を、神が正しい方向へと導くべく、人生の有り難いお勉強とやらを与えて下さっているのだと思えば、少しは謙虚にこの状態を受け止める事が出来るのかもしれない。

何しろ、時々ガツンとやらねば、空の彼方にまでも舞い上がりかねないヤツなのだから。

 

 そんなわけで、渡米後最初の一年間は、サンフランシスコの東のヘイワードで、毎日みっちり『我慢大会』のトレーニングを積むような時間が過ぎて行った。

全く、アメリカ人というのは何をするのも半端じゃなくて、夕食のテーブルをひっくり返すも、漏れなくフルジェスチャー入り馬耳雑言のおまけ付き。
『よくあんなパワーが出せるなあ』なんて、ただただ感心させられる毎日だったりしたのだけど。

しかし、そんな暢気な事を言ってられるのも、まだまだ旅行者気分の抜け切らない、外国生活初心者マークの頃だけだ。
毎日目の前で展開されるスリルとサスペンスに満ち溢れた時間の中、次第に『このままいたら殺されるかなあ?』なんて思いに駆られ始め、それでついに、茹だるような真夏のある日、トランク一つと、小さなカーシートに詰め込んだ、まだ産まれて四ヶ月しか経っていない『お猿』だけを両手に抱えて、さっさとここ、サンフランシスコにあるアジアン・ウーマンズ・シェルターにまで逃げ出して来たわけである。

シェルターでの生活は、中にいる避難居住者たちの安全を考えて、厳しい秘密主義が貫かれている。
十年間一緒に仕事をしているというブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, ドメスティックバイオレンス, シェルター, 生きる強さ, 家庭内暴力, アメリカで子育て弁護士事務所にさえも、そのロケーションは知らされてはいない。
私もここで、その詳細を書くのはやめておこう。

しかし、ただ一つだけ言っておきたいことは、そんな組織のパワーという物は偉大な物だ。
こんな外国生活、増してや、全く新米ホヤホヤ、ビギナー組ママさんの私でも、シェルターでお世話になる事が出来た三ヶ月の間に、サンフランシスコに合法的に滞在するビザ、親権の裁判の手配、これから言葉さえもろくに通じない、初めての外国生活に、ベビーとたった二人で放り出される準備を整えてくれた。

 

 今日は、お世話になったシェルターを出て、いよいよ小さなベビーと二人っきり、この遠い外国のダウンタウンで新しい暮らしを始める日だった。
午後も遅い時間、ボランティアに助けられて、この小さなアパートメントへと移って来た。

引っ越しは、別にこれといった荷物も無く簡単に済んだ。
一通りの仕事をし終えると、手伝ってくれた皆は、次の仕事に向けて忙しそうに帰って行った。
三ヶ月間、家族のように助けてくれた彼女達も、もう、これからはお互いに連絡を取り合う事も無い。

 

 周りから人の影が消えてしまうと、何もかもが見知らぬ空間の中、たった一人、ポツンと置き去りにされた心細さが襲って来た。

家具も無いがらんとした白い箱。

『こんな所で何をやっているんだろう?』

不安とも恐怖とも、何とも形容し難い感情の塊が身体の中を突き上げて来る。
家族も友達も、知ってる人たちは皆、遠い遠い場所にいる。
明日からは、この不思議の街で、たった一人の生活が始ってしまう。

暗い路地の片隅に、一人ぼっちで取り残された捨て犬の心細さが身体中に滲みて来るような気がした。

 ‥とその時、

「ファイヤエ~~~‥」

静まり返った部屋の中に、突然生の抜けた音が響いた。
思わず目が走る。
そこには、小さなベビーチェアの中で、手足を大の字に広げたお猿がぐっすり眠りこんでいた。

さっきまで、珍しそうにあちこちを指差しながらはしゃいでいた彼女も、ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, ベビーいつの間にかコトンと寝入ってしまったようだ。

『ヘイ!大丈夫だよ。私がここにいるよ。』

微笑みがふっと顔に浮かぶ。
荷物を整理する手を休め、プクプクしたホッペをつっ突いてみる。

気分が少し軽くなった。

 

 色々思い悩んだ所で、時間は同じように過ぎて行く。

とにかく今は立ち止まらずに、恐る恐るでも目の前のドアを開け続けて行こう。そこで待ってる何かは、これから先の『お楽しみ』。明日からはまた新しい一日が始る。

この小さな腕が私に向かって開く限り、何だか頑張れそうな気がした。

 


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テーマ:海外生活エッセイ - ジャンル:日記

[2012/03/19 13:21] | エピソード | トラックバック:(0) | コメント:(10) | page top↑
エピソード1
 アパートメントの部屋がようやく人の住める状態に整って、少しづつ新しい生活のリズムも回り出すかと思えた頃、ドーンと震度七級のホーム・シックが襲って来た。


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自分でも、かなり阿呆な姿を曝しているなあとは思うのだけれど、もう、何を見ても、ホームタウンの福岡を想い涙涙に暮れる毎日。
耳に入る英語にさえも、胃が拒否反応を示しムカムカ。

サンフランシスコにこれといって怨みがあるわけじゃないけれど、実際もう、外の景色を見るのもノー・サンクスといった気分である。

 

しばらくそうして、ただひたすらに気分が落ち込む日々を送っていると、ワシントンのサチコさんからEメールが届いた。

『ネットの友達募集の掲示板に、アドをのっけてみたら?』

 

 サチコさんとは、まだヘイワード生活を送っていた頃に、ネットの中の、外国在住日本人関連のサイトを通して知り合った。その頃の彼女はまだ佐世保にいて、ネイビーにいるアメリカ人の元旦那と、日本とアメリカを行ったり来りして暮らしていた。

不思議な事に、その頃から私達二人の境遇は、驚く程似たような経過を辿って来た。
そして、私がサンフランシスコのシェルターに逃げ出した頃、彼女も三人の子供を連れて、ワシントンまで逃げ出して来た。
それからこの半年間というものは、お互いに、つかず離れずメールの交換を続けている。

ワシントンで、新しい生活に右往左往する彼女の様子が、私がサンフランシスコで送る時間と不思議な程にだぶって来る。どちらも、誕生日がたった二日しか違わない魚座組さんである。こんな運命の類似性を見ていると、『案外星占いも侮れない』なんて、ひしひしと感じてしまう今日この頃だったりする。

「私も最初こっちに来てから、友達の勧めでネットにアドを出してみたの。
最初は日本人の感覚で、『ちょっとネットで友達募集だなんて怪しいかなあ』なんて思ったりもしたんだけど、やっぱり見知らぬ土地で、しかも、子供三人も抱えて、一から人に会って行くってのは大変な事でしょう?
でも、いざ思い切って、そこから色んな人たちと話を始めたら、『自分の位置』っていうものが分かり出した。 こっちでは日本と違って、ネットで出会うって感覚も、もっとカジュアルに定着してるみたいだし。
とにかく、見渡す限り何にも見えない大海原に、一人でポツンと浮かぶような心細さからは解放された感じですよ。」

ここ暫く止まっていた時間の中に、『あと一人の私』の声が響いて来た。

 

 それから二、三日悩んだ末、私もその掲示板に、初めて『友達募集のアド』なる物をのっけてみる事にした。
正直言って、これはかなりの大冒険。
『何人か返事を貰ったら、その中から気が合った人二、三人見つけて友達になれればいいかなあ‥‥』なんて、我ながら最初は、そんな『謙虚さ』を全面に押し出しながらの小さなドキドキのスタートだった。

 

 ところが実際フタを開けてみると、その反響の凄さには驚いた。

とにかくアドを載せた日の夕方からは、『来るわ来るわレスポンス!』ってな感じで、それこそ怒涛のように返事のメールが押し寄せて来た。

まだ日本にいる頃冗談のように、『日本女性は、こちらでは物凄くモテまくる』という話を聞いていた。しかし、実際もう三十も半ばの子持ち昆布女に、ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, マリリンモンロー, 外国人とのロマンスこれ程までに情熱を注げるサンフランシスカン男たちのパワー‥‥。それは一体、何をもって湧き出て来たりするのだろう?

マクドナルドのハンバーガーやスターバックスのコーヒーには、恋の媚薬でも入っていたりするのかしら?

ついでに言うと、彼らの辞書には『謙虚』といった文字などは皆無のようだ。殆どの手紙に、'i am handsome'だとか 'attractive!' 'good looking!'など、しっかり『自分で』書いてある。

百歩譲って彼らの言うことが本当だとしよう。

それじゃあまるで、このサンフランシスコ中が、絶世の美男子だらけという事になってしまうのではないか。

ちなみにこのattractiveという単語、魅力的な人を形容するのにこちらではよく耳にする言葉だ。
しかし、いったい彼らが書く自分のattractive度具合というのは、誰から見たattractiveなのだろう?『自分自身』からなのか『友達』からなのか、はたまた『女性』からなのか、それともたんに『お母さん』からなのか‥。
それによってもこのattractive度、随分違った物になって来ると思うのだけれど。

この次、またこういうアドを出す機会が来るとすれば、ここの所、はっきり明記するようにお願いするのを忘れないようにしよう。

 

 サチコさんがくれたアドバイスメールの中には、これまでの、彼女自身の体験談が幾つか書いてあった。

十年前のスリムな写真を送って来て、いざ待ち合わせ場所に行ってみると、とんでもないおデブがそこにいた。驚いた当のサチコさん、さっさと人違いのふりを決め込んでそこから飛ぶようにして逃げ帰って来た。
‥とか、その他にも、ガソリン代も払えなくて、待ち合わせ場所まで来る事が出来なかったスタービング・アーティストの話‥。
そこまで貧乏しているんだったら、友達捜す前に仕事さがせよ!

何だかもう、笑ってよいのか真剣に聞いておくべきなのか‥。この冗談のような『先輩』のアドバイスを参考にしながら、これから自分なりに、この新しく手に入れたおもちゃ箱の中身をのぞいて行こう。

どんなものが隠れてるのか、それは後でのお楽しみ。

 


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[2012/03/19 13:47] | エピソード | トラックバック:(0) | コメント:(0) | page top↑
エピソード2
 今日から十二月が始る。
サンフランシスコの街はクリスマスに向けて、もうすっかりお色直しを済ませている。

アメリカに来てから初めて一人で過ごすクリスマス。
日本で過ごした賑やかな季節の思い出が、過去の時間に埋もれて行く。


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 今日はお猿をデイケアまでお迎えに行く途中、ちょっと寄り道をして、ビーチまでやって来た。

最近、救いようのなく気分が落ちこんでしまう時には、ただひたすら海を見に行く。

日本庭園や美術館、乗馬クラブなどを、すっぽりその森の中に覆い隠すゴールデン・ゲート・パークの横を走り抜け、ミュニ・バスが終点に近付くと、目の前には突然、銀色に輝く一面の波が飛び込んで来る。
海鳥たちが飛び交う蜂蜜色の砂浜では、銀色に染まった逆光を浴びて、そこを行く人々のシルエットがゆっくりゆっくり動いている。

潮っぽい風に体を抱かれながら、海岸線を見下ろすコンクリートの壁に腰を掛けて時間を過ごす。
雄々とよせる波しぶきの中に、ちっぽけな自分が溶けて行く。

 

 いつものように海岸線の壁によじ登ると、『今年ももう終わりだね』とでも言うように、海から冷たい潮風が顔にぶつかって来た。
スエットのフードを被り直し、波打ち際に目を向ける。 そこでは、ヨチヨチ歩きのベビーがママに手を引かれながら、ぎこちない動きで大きな犬たちと遊んでいた。

思わず口の端が弛む。
その、まるで緩んだゼンマイが仕込まれたような頼り無い動きを見ていると、ふいにお猿の笑い声が、耳のすぐ横で聞こえたような気がした。

いつもは、絶えることなく、人が行き交うオーシャンビーチの砂浜。
今日は、風の冷たさのせいか、海岸線にはこの親子以外の人の姿は見えない。
ただ眩しく輝く波だけが、強く柔らかく、ボレロのように同じリズムを刻みながら、静かに日の暮れの海の風景を描いている。

「ふふふ‥。」

微笑みが、ふとこぼれてきた。
私にも、今では無条件で自分を必要とする小さな存在がいてくれる。
凍えた身体が、中からほんわりあったかくなった。

大きな波が、遠くからゆっくりと寄せて来て、あたり一面、透き通る水のベールで覆った後、また海に向かってゆっくりと引いて行く。
パチパチ弾ける白い泡が、心の引き出しを開けて行く。
空に透ける水平線。時間の記憶が蘇える。

 

 お猿の誕生。
この世界の中で、自分が一番ではなくなった日。

昨日の事のように感じるのに、また、遠い昔のようにも感じてしまう。
彼女がこの世に産まれた日、私は命の神秘を知った。

昨日まで、ウンともスンとも全く気配のなかった物が、全く予定日ぴったりの朝、突然バスルームで破水した。
ショックな気分に浸る暇もなくそのまま病院に駆け込むと、ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, オーシャンビーチ, ビーチ, 海,海岸, 出産, 海外で出産, アメリカで出産, ベビーもう、そのたった二時間後には、産まれ立てホヤホヤの小さな小さな『ヤツ』の体は、私の腕に抱かれていた。

この几帳面な性格といい、せっかちな誕生の仕方といい、まるでそこには、これからの彼女の人生が語られているようではないか。

何しろ、ドクターに痲酔をうってもらってから、そのもう十分後には、さっさとママのお腹から出て来ていた。へたをすると、無痛分娩の痲酔も間に合わない所だったのだから、そう考えると、今さらながら『ちょっと恐い』‥。

ちなみに、この痲酔を使った出産というのは、まだまだ日本では『危険だ不自然だ』と、あまり諸民権のあるものではないようだけど、ここアメリカでは、もう大部分の出産が、普通にこの痲酔を使った無痛分娩で行われる。
もちろんこれは、本人の希望を確認した上の事ではある。

まあ、何を隠そう私自身、妊娠当時はその頃流行りの『水中出産』なる物に甘いロマンを求めていた口ではあった。しかし、ヘイワードの『ど』田舎で、ラマーズ法など洒落たものをやってくれる病院を捜すのは難しい。結局最後には、『元夫』フレッドの言うことに従って、しぶしぶ痲酔を使った出産をOKする事になった。

しかし、一旦陣痛が来てみると、この時ばかりは最初で最後、フレッドと、その田舎の選択肢の無さには、心から感謝する事になった。
とにかくあの陣痛の痛みといったら‥、ただ一言、『痛かった』で済ませてしまえるような代物ではない。敢えて、その『痛さ具合』を今ここで言えと言われたら、
『十年分の生理痛が一度に腰を襲い、まるでそこからティラノザウルスに下半身をもぎ取られて行くような物凄い痛み。』
‥とにかくそれまでの人生の中、想像しようもなかった程の『猛烈』なる苦しみだったと言ってもまだ足りない。

別に、世の中の妊婦さんたちを脅かすつもりでこんな事を書いているのではないのだけれど、それが正直な所、言わずにおけない私の本音だったりする。

『痲酔無しのお産なんて、痲酔無しで外科手術を受け身体を切り刻まれているのと同じである。』

これは、出産を経験した女性なら誰でも、二つ返事で同感して頂ける意見だと確信する。‥‥イタタタ。

 

 所でなぜ、無痛分娩で出産をする筈だった私が、こんな陣痛体験などさせて頂く羽目となったのだろう?それはまた、ここアメリカでのお約束、病院に着いて分娩室に運び込まれた後、そこからは当然のように、痲酔のドクターが遅れたからだ。
お陰様でこの私、幸か不幸か、この有り難い貴重な人生経験とやらを、選択の余地無くしばしの間満喫させて頂く事となった。

大昔、『ご先祖様』が、神からの言い付けを破ってリンゴを食べたその罰に架せられたという陣痛の苦しみ。しかし、これではあまりにも、ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, オーシャンビーチ, ビーチ, 海,海岸, 出産, 海外で出産, アメリカで出産, ゴジラ, 怪獣理不尽な話と言えるのではないのだろうか?
何故、そんな顔も存じ上げない遠い過去の『親戚』の罪が、今だこうして私の上に廻って来たりなどするのだろう?
固い分娩台にのぼり、ひたすら火を噴く怪獣のように叫びまくりながら、お馬鹿な疑問が頭の中をさまよった。

暫く置いて、ようやく痲酔のドクターが部屋に駆け込んで来てくれた。

「あ、ごめん。」

そんなお間抜けな台詞にも怒りを返す余裕はない。とにかく百本でも二百本でも、早く痲酔をうってくれ!

 

 それからすぐに、海老のように丸めた背中に、ズーンと痲酔の針がうたれた。そうした途端にあら不思議。針が抜かれるのを待つまでもなく、それまでの痛みは嘘のように薄らぎ、下半身からは、やけにポカポカ、少しラリったような、何とも言えない好い気持ちが満ちて来た。
『地獄から天国に一気に引き上げられた気分。』
まさに、地獄に仏とはこういった事を言うのだと、妙に実感させられた瞬間だった。

痲酔を終えると、その後はもう、それまでの痛みや苦しみは魔法のように消え去った。それまでただの煩い騒音でしかなかったナースたちの英語の指示も、余裕で耳に入って来た。

痲酔に使う薬には、笑気ガスでも入っていたりするのだろうか?
ポカポカ下半身に感じるいい気持ちには、何だかもう、笑い出したくなってきてしまう。

しかし、そうは言ってもお腹の中では、何やら『巨大な物体』が、途中、何度も止りながら、下へ降りて来るのが分かってしまう。
それも、よくある例えの『便秘でなかなか出なくって、とっても苦労のあの感じ』。
失礼。

その身体の中に感じる大きさに、『やっぱりこれが痲酔無しだったら、とてもこんなふうに冷静に構えてなんかいられないよなあ‥。』なんて暢気な事を考えながら、人生初の大仕事はいよいよクライマックスに突入した。

ついにベビーが出て来た瞬間。
そこに初めて見た我が子の姿は‥、何だか大きなカエルが大の字逆さまで、『へーン!!』っとドクターの手からぶら下がっているような感じだった。
ホヤホヤと湯気があがるグニャグニャした身体のあちこちには、まだ白い脂肪の膜がくっ付いている。ヘソからのびるヘソノウの、そのネオン管よろしい鮮やかな蛍光グリーンの美しさといったら‥。思わずナースに、『そのヘソノウごと記念に欲しい』などとお願いしそうになった。

 

 まあ、何はともあれこうして無事に、五体満足の姿でお腹から出て来てくれた『お猿さん』。産まれた時の体重は、たった五パウンド二オンスの、アメリカ社会の中ではとても小さなベビーだった。
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こうしてまるでひと事のように迎えた『お猿さん』との初顔合わせ。私としては、もう少しか細く震えるような、可憐なベビーの姿を期待してたりしたのだけれど‥。まあ、この自分が母親である事実を考えると、彼女にもそれなりの言い分はあるだろう。

 

 さて、以前の私は、女であればベビーをもったその瞬間から、本能的に母親になれるのだと信じていた。
しかし、実際それを体験して言える事は、ベビーがお腹から出て来る瞬間なんて、そんなドラマのシーンにあるように、大袈裟な感動で涙してる体力なんぞさらさら残ったりしてる物ではない。ただただヘトヘトに『ヘーッ‥‥』と気が抜けて、とにかく後は、ゆっくり大の字で休ませて頂きたいだけである。うーん‥。
憧れていた、『ベビーが産まれた瞬間、人生が変わっちゃう程の感動!』なんて物は、もう、どっかの想像力の有り余ったタフな女性たちに勝手に任せておきなさいという感じ。

しかし、こんな初心者マークのビシバシ入った母親でも、初めてベビーを腕の中に抱いた瞬間から、毎日毎日、数時間刻みでミルクをあげてオシメを替えて、泣くのをあやしてお風呂に入れて‥。そうやって、自分の体から産まれて来た小さな小さな存在を、大事に大事に守りながら一緒に時間を重ねて行く内、いつしかゆっくり歩くように、掛け替えのない絆が刻まれ始めた。
まだ、ムシのようにちっぽけなこのチビ助けが、いつも笑っていられるように。そしてまた、それが励みとなって、明日を頑張る力が沸いて来るように。

人は親になる事を、ずっと時間をかけて学んで行くのだと思う。素質の違いはあれど、生まれついてのベテランママなぞどこにもいない。
そんな事が、お猿を持って初めて分かった。

こんな大切な時間も、いつしか記憶のアルバムに埋もれ、これまでゆっくり思い出す事も無かった。 今、私がこうして一人のベビーのママをしているだなんて、未だに世界のミステリーである。

 

 海岸線にはいつの間にか、また人の姿が見えて来た。
さっきの母子のシルエットは、すっかり消えてなくなっていた。ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, オーシャンビーチ, ビーチ, 海,海岸, 出産, 海外で出産, アメリカで出産, ビーチ, 海岸, 犬, 砂浜, オーシャンビーチ

オーシャンビーチのかける魔法。
パッと瞬きをした隙間から、不思議な幻をのぞき見た。

人はここで、大きな海に抱かれながら、束の間の休息を過ごしまた日常に戻って行く。

そろそろ日も暮れて来る。お猿を迎えに行くとしよう。

 

 『今日』という時間に何が起ころうとも、また、『明日』という新しいドアが開かれるのを待っている。
恐れずに進んで行こう。 大きな物に包まれながら。そして、腕の中にある小さな物を、大切に大切に守りながら。

 


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[2012/03/20 14:17] | エピソード | トラックバック:(0) | コメント:(2) | page top↑
エピソード3
 あまりの反響の大きさにすっかり気も退けてしまい、誰に返事を書くでもなく放っておいたネットのアドに、初めて、ちょっと気になるメールが舞い込んだ。
1日置いてそれに返事を書いてみると、『彼』からは、その日の内に写真付きの返事が来た。


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 サンフランシスコの大学病院でERドクターをしているというその男、送って来た写真を見ると、『クリス』というスマートな名前の響きとは似合わずに、何だかおっきなメガネをかけた、とぼけた顔の男だった。

そして、これがまたなかなかの知能犯。

一応、アドには、年令は私と同じ『三十代』という希望を書いていたのだけど、それに対して『彼』が書いて来たことは、『三十九才、射手座』。‥ん?ちょっと待てよ。今がもう十二月の始めだから、『射手座』であれば、十一月末の生まれでない限り、今月中には四十の大台に乗るんじゃないか。 うーん、全くやられちゃったねって感じ。
ブロンド、青い目、186センチ。まあ、他では軽く私の理想をクリアーなので、 歳の部分はちょっとだけ目を瞑ってOKとする事にした。‥なんて。

それから『彼』とは、メールの交換が始まった。
毎日、何気ない言葉を交わしながら、お互いのバックグラウンドを話して行き、そしてついに、よりにもよって、年も終わりの大晦日の晩、初めて実際の対面をする事になった。‥と言っても、そんなデートなどといったロマンティックな物からは程遠く、単に『彼』のオフィスで、顔を合わせるというだけなのだけれど。

実は、これまで何度か、『一度ゆっくり食事でも』というお誘いは受けていた。しかし悲しいかな、ERドックという職業柄、せっかく予定をたててはみても、直前になると、いつも『待ってました』とばかりに急患が押し寄せて来てボツになる。‥といったことの繰り返し。それで結局、いつまで、こうしてだらだらと、出会いの風船を萎ませるよりは、いっそ、いきなりブラインドデートなどとは畏まらずに、まあ、とりあえずは一度だけでも、実際に顔を合わせる機会を持とうじゃないかという事になった。
大晦日には、お猿も正月ビジテーションで父親の所に行ってしまう。 

 

 『アポイント』の時間は、『彼』の仕事が一段落つく夕方遅く、もう、日もとっぷり暮れた後だった。言っては悪いが、一般人の私にとって、こんな時間の病院訪問、何だか『見えないはずの物』にばったり出会ってしまいそうな、おどろおどろしさがあったりする。全く、最初の顔合わせからこんなことになろうとは‥。ちょっと、先行不安なヤツである。

病院に着くと、予め、Eメールで受け取っていたディレクションのメモを頼りに、静まり返った裏通りにあるエントランスのドアを開けた。

そこにいた、ヒョロ長い黒人のガードマンに不振な目で見られながら、突き当たりのエレベーターに乗る。二階でエレベーターのドアが開くと、ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト,すぐ正面が受付のカウンターになっていた。

明かりも落とされ人気のないフロアーでは、非常口のサインだけが、ぼわーっと無気味に薄明るい光を放っている。

『いったい、こんな空っぽの空間のどこに、まだ働いてる人がいるのかしら?場所、間違がっちゃったかなあ‥。』

心細さが膨らんで来る。

その時、空っぽだった受付に、でっぷり太ったフィリピン人のナースが顔を出した。せかせか棚を掻き回しながらお目当てのファイルを手に取ると、後は、フロアーにぽつんと立つ私の姿などには目もくれず、急いでまた奥に引っ込もうとした。

「あのー‥。」

これを逃すと大変だ。すかさず彼女を捕まえて、『クリス』の居場所を聞いてみた。
もう、一般受付けもとっくに終わっているこんな時間に、患者でもない女性がこんなところにうろちょろと入り込んで来るなんて‥。彼女から向けられる不振な視線も、当然といえば当然だ。

「オーケー。ここでちょっと待っててね。」

ニコリともしない愛想のない声でそう言うと、彼女は、また忙しそうに奥へと引っ込んだ。

シーンと沈む空間の中、堅い椅子に腰掛ける。
まるで悪い夢でも見てるようだ。

 

 そうして座って待つことしばし、間もなく、奥からパタパタと忙し気なスリッパの音を響かせて、背の高い男が顔を出した。

「ハイ、お待たせ。こんな所まで来てもらうことになってしまって悪かったね。でも、やっと会えて嬉しいよ。」

にっこり笑って握手の手を差し出す『彼』の姿といえば、ヨレヨレの白衣に首から聴診器をぶら下げて、何ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, ドクターだか極めて平常心のご様子。
こちらは初めてのご対面に向けて、日頃し慣れないアイラインまでバッチリ、気合いを入れてやって来たのに‥。

あまりのその拍子抜けに、お陰で緊張も吹き飛んだ。

「さっき、また急患が運び込まれてね。今までちょっとバタついてたんだけど、丁度少し落ち着いたとこでよかったよ。ホント、こんなとこで申し訳ないなあ。こっち、奥に僕のオフィスがあるから、そこでコーヒーでもいれるよ。」

気さくな笑顔に、さっきまでの心細さが消えて行く。
初めて実際に顔を見た『クリス』は、そのぼろぼろのいでたちの割りにはハスキーな声で柔らかく話す、暖かい印象の男だった。

 

 さて、それからオフィスに腰をおろし、いざ話を始めようと口を開いた途端、机の上のブザーが鳴った。クリスが苦笑いでそれに答え、何やら指示を出して行く。それが片付き、『さあ、今からゆっくり話を始めよう』‥と思うと、今度はドアがノックされて、そこからナースが顔を出した。そして、忙しそうにカルテを差出しながらクリスに指示を仰ぎ始める。
普段、男の言い訳にしか聞こえない『忙しい』という言葉も、この男に限っては本当のようだ。

その後も、容赦の無い呼び出しはひっきりなしに続き、『ブー』とか『リーン』とか『ピピピ』とか、しょっちゅう、そこここから何かの音が、モグラ叩きのモグラのように、小さなオフィスに鳴り響いた。
その度に、『ちょっと待ってて‥。』っと、クリスはあたふた部屋を出たり入ったり‥。

『いったい私、この大晦日の晩に、こんな所で何やってんの?』

明るすぎる蛍光灯の下、一人でボーッと取り残されながら、思わずプッと吹き出した。

そうして忙しい『面会』の中、お互いの『自己紹介』を済ませると、その後は、話も早々に切り上げて、私はその場をお暇する事にした。

 

 タクシーが病院に到着すると、クリスは見送りに、一緒にエントランスまで降りて来てくれた。

「今日は会えてよかったよ。」

降りて行くエレベーターの中、『サンキュー』の握手を交す。

「実は、ネットのアドなんて見たのは初めてだったんだ。 夜勤で手があいた時、何となく眠け覚ましに覗いてみてね。見て行く内にブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, ロマンス, 握手, 手『シャパニーズ』っていう文字が目に入った。それで君に連絡をとってみようと思ったわけさ。
日本という国には、ずっと前から興味があったんだ。
これから色んな話が聞けたらうれしいよ。よろしく。」

穏やかに見下ろされる青い瞳を感じながら、大きな手にそっと触れる。
重ねた手のひらから、ほんわり優しさが滲みて来た。

 

 アパートメントの部屋に戻ると、しばらく窓辺に腰掛けて、ぼんやりと外に瞬く街の光を見つめていた。

‥と、ふいに遠くの方から新年を祝う花火の音が聞こえて来た。

一年の最終の時間。
産まれて初めて、たった一人で迎えた大晦日。
でも、なぜか淋しさを感じない。

今日はぐっすり眠れそうな気がする。

時計のハリが十二時をまわる。
少しづつ世界が広がり始める。

 


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[2012/03/21 13:40] | エピソード | トラックバック:(0) | コメント:(0) | page top↑
エピソード4
 ハローインに、サンクスギビング、クリスマス。
年の暮れにかけて浮き足立った街の風景にも、新年の幕開けと共に、また静かな時間が戻って来た。

アメリカでのお正月は、素っ気無いほど静かに過ぎて行く。
年明けのその日、人々は、別に特別な何かをするわけでもなく、ただひとつの祭日として家族と家でゆっくり過ごす。そして新年二日目から、街は平常業務に戻っていく。


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 私の新年といえは、年明け二日目に、カソリックチャリティーの事務所を訪れる事から始った。

現在お猿のデイケアは、シェルターの紹介で、カソリックチャリティーのフリーサービスを受けている。
このサービスというのは、サンフランシスコに住む、私のように事情を抱えた低収入のママたちが、自立して仕事が出来るようになるまで、子供にかかる費用を援助してあげましょうといったありがたいサービスだ。
システムに登録されたデイケアに子供を預けると、二年間に限り、その料金を、この組織が肩代わりして払ってくれる

アメリカでは、子供が小学校に入るようになると、それ程お金はかからない。公立の学校ならどこでも、授業料は幼稚園から無料である。
しかし、その前のデイケアやプレスクールに子供を預けるとなると、働くお母さんたちは、目が飛び出る程の料金を取られてしまう。

ちなみに今、お猿が通うデイケアの正規の料金は、一週間で160ドル。一月で計算すると、640ドル以上はかかってしまう。
これでもサンフランシスコの中で安い方だというのだから、驚く所であブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, 子供たちる。

また、この料金というのも、子供の年令によってまちまちだ。
まだ手のかかる乳飲み子となると、軽く1000ドルは取られてしまう。

働きに出ても、お給料の30%は税金に持って行かれるこのアメリカ。これではサンフランシスコのママサンたちは、ベビーのデイケア料金を稼ぐ為に働いているような物である。

しかし反面アメリカでは、こういった弱者のサポートに向けた社会の組織がとても充実している。やはりこれは、社会の中に、キリスト教のボランティア精神が深く浸透しているお陰だろうか。

何しろ大学受験の面接試験でも、ハイスクール時代にどんなボランティア活動をしたかなど、いちいち問われるお国柄だ。
私のように、突然、右も左も分からない遠い外国の街角に放り出され、仕事も無い、お金も無い、最低の生活知識にもまだまだ四苦八苦する素人ママでも、こういったカソリックチャリティーや、シェルターのアフターフォローが、何とかベビーと暮らして行ける生活に導いてくれた。これにはどんなに感謝しても、感謝しきれる物ではない。

まあ、この素晴らしいサービスも、もちろんただ胡座をかいて甘えていられるものではない。毎月それなりにビシバシと、細かいチェックは入って来る。
例えば一つの条件として、学校に行ったり仕事をしたり、『自立のために頑張ってます!』という証明を、月に一度、具体的にケースワーカーまで提出しなければいけなブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティストい。
今の私は、何をおいても、まずは英語の克服である。
シェルターに入ると同時にカレッジの、外国人向けの英語クラス、ESLのコースを受け出した。

今月は、その午前中のクラスにも登録する事が出来たので、また、何とかサービスの1月更新スタンプを頂いた。
こうして毎月期間が長くなるにつれ、生活チェックも厳しさを増して行く。最近では、少々、スリルとサスペンスの入る緊張の時間である。

 

 ああ、しかし、ここで一言言っておきたいのだけれど、こう書くと、はたしてこの生活チェックをするケースワーカーの人物像、まるで『マルサ』よろしく、厳格でギスギスした人物のように聞こえてしまうが、実際、私を担当している『ビーシー』は、どこにでもいる、とっても気さくなフィリピン人のおばさんだ。
月一回の面接では、このデイケアの問題に限らずに、日々の生活の中で起こる疑問や問題、一つ一つに親身になって細かいアドバイスをくれる。今の私にとってはまさに、『お婆ちゃんの知恵袋』的な存在だ。

まあ正直言って、時々は、そんな有り難すぎる細かな彼女の干渉に、子供の頃お隣にいた、少々辛口なおばさんの顔を思い出したりもしてしまうのだけれど‥。
結局、こんな『おばさま方』の習性は、どこの国でもそう変わることなく、暖かさと煩わしさの間を行ったり来たりしているのだろう。

うーん、なんと罰当たりな。

 

 今日も面接が終わると、ビーシーが、フリーのオムツの特大袋をドーンとお土産に付けてくれた。
しかし、ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, ケーブルカー, ケーブルカー乗り場, 観光, サンフランシスコ ダウンタウン, 坂井浩子, hiroko, hiroko sakai, Japanese artist in San Franciscoこのカソリックチャリティーの事務所といえば、ダウンタウンのど真ん中。
そこからアパートメントに帰るルートには、当然、お洒落なユニオンスクエアがあったりするわけで、観光客で賑わっているケーブルカーの乗り場の横も通っていったりするわけだ。

自分で言うのはなんだけど、私もすっかり逞しくなったものだと思う。今では、そんな洒落者達で賑わう『異空間』の中でさえも、テロテロのTシャツに大入りオムツの袋を抱え、平気のへの字で通り抜けて行けたりする。
それにはかえって、『このサンフランシスコで頑張ってるんだよーん!』なんて、開き直りの境地に満足だ。

とにかくいくら恰好をつけてみた所で、シングルマムの私にとって、このフリーのオムツを手に入れた『充実感』は、何にも変え難い幸せの一つだったりするのだから。

 

 マーケット・ストリートまで出てくると、いつもの黒人の二人組が、広い歩道でタップのパフォーマンスをやっていた。ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, ケーブルカー乗り場, 黒人, タップダンサー, タップダンス, マーケットストリート, パフォーマンス 一人が足もとに並べたバケツでドラムのリズムをとる横で、相棒のブラックが、そのまた、どっかの工事現場からでも拾って来たようなぼろぼろのベニア板の上で、弾けるようなタップを踏んでいる。

白い歯を大きくむき出して、ドラムが無邪気にニヤリと笑う。軽快に刻むラップのセリフがかっこいい。
そんなクールなサウンドに、道行く人たちは足をとめて、周りに輪を描きながら一緒にリズムを刻み出す。

サンフランシスコの一角で、まるで、ニューオリンズの街角にでも迷い込んでしまったような楽しい幻に酔いしれる。

 

 この街を流れる時間には、人々のパワーが溢れている。
『負けないように頑張らなくちゃ』という思いが、また明日を生きる勇気になってくる。

毎日何かしら新しいことが起こってくる。
そして一つ何かを乗り越える度、それが笑顔に変わっていく。

 


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[2012/03/23 12:26] | エピソード | トラックバック:(0) | コメント:(0) | page top↑
エピソード5
 年が明けて一週間。クリスと二回目のデートの約束をした。


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 あの、バタバタとした初顔合わせの夜以来、彼とは、今では殆ど毎日のようにして、電話やEメールで連絡を取り合うようになっている。
しかしまた、実際に会って話をするという事になると、基本的に、救急病棟、テレビドラマの『ER』の世界で生きる男‥。私のほうにも、ウイークデイの夜は小さなお猿が一緒にいて、また二人、外に出てゆっくり顔を合わせるといった時間の接点を見つけるのは、お互いそう簡単な物ではなかった。

そんな中、彼からのEメールで、お猿がフレッドの所に行く週末の夜に合せて、今度は二人、どこかゆっくりとした雰囲気で食事でもしないかというお誘いが入った。
即OKはしたものの、前回の初ミーティングがあれである。今回も、この男との『初デート』、一筋縄では行かないことを覚悟しておいたほうがよさそうだ。

 

 さて、いよいよ本番の当日。
時計の針が、あと十分でクリスのお迎えの時間を指そうとする頃、ちょっとした緊張を感じながら、口紅を塗り直し、鏡の中に映る自分の姿をもう一度隅からチェックした。そして、『さあ、これで用意はバッチリ!』と思った瞬間、‥ふいに電話のベルが鳴った。
今回もどうやら、運命の女神が私達に微笑んでくれることはなかったようである。
受話器の向こうからはすまなそうに話す、少し疲れたクリスの声が聞こえて来た。

「ごめん‥。実は今、バタバタ急患が入ってね。次のシフトのドクターだけじゃ回らなくて、僕も今、帰るわけには行かなくなったんだ。」ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, イエローカード, サッカー

全く、イエローカード二枚目のクリスである。

しかし、それでも少しの時間なら、様子を見て病院を抜け出す事が出来るという。 男とデートをするのに、そんな強行突破をするような思いで会おう事になろうとは、今まで、想像だにしなかった世界だ。
でも、この機会を逃したら、また次はいつになるのか分らない。
それに加えて、こんな風に、いつもバケツをひっくり返したような時間を走り回る姿には、何だか同情さえも感じて来る。

結局、その五分後には、自分のお人よし加減に呆れながら、ミュニの中にゆられていた。

 

 病院の前でミュニを降りると、また、日はとっぷりと暮れていた。
エントランスのドアを開けると、前とは違って、やけに愛想のいい黒人のガードマンが、ローリーポップをくわえた口で、『ハイ!』とにこやかに挨拶をくれた。

その思い掛けない笑顔に励まされながら、また、夜の病院のエレベーターを上がって行く。
相変わらず無気味に静まりかえるロビーに着くと、今度はバックから携帯電話を取り出して、予め貰っておいたクリスのポケベルのナンバーをうった。
『1』の番号を入れると、私が到着した合図。前回のように、へらへら私用で来ている私などが、夜間の救急患者でばたつくナースたちの手を煩わすのにはどうにも気が退けた。

 

 それからロビーで待つこと五分。

『チン!』

シーンと沈んだホール中に、大きなベルの音が響いた。思わず椅子から飛び上がり、ゾワゾワと鳥肌が蠢きたった腕を押さえながら、その無遠慮な音に目を向ける。そこには、開いたエレベーターの扉の中から降りて来る、またヨレヨレの白衣に身を包んだクリスの姿が見えた。

何だか先日にも増して、その『ぼろさ加減』には磨きがかかり、もう、殆ど擦り切れちゃってる感じだ。

しかし、こっちを向いてその顔をあげた瞬間、疲れた顔にニッコリと笑顔が浮かんだ。大晦日の夜、別れ際に触れた手の温もりが胸の中に蘇る。吸い込まれるような青い瞳に、心臓が駆け足を始め、甘酸っぱい緊張で耳の先が熱くなる。
そうして、目の前に立ったクリスと『感動のハグ!』‥と思った矢先、

「ちょっと、さっき亡くなった患者さんがいてね。今、事後処理してるとこなんだけど、今のとこ、僕の仕事は終わって休憩だから。あと何時間かは大丈夫。」

「‥‥‥!?」

ロマンティックに盛り上がった気分も、敢え無くぺちゃんと空気が抜けた。
彼はと言えば、極めて平常心の澄ました顔で、腰にぶら下げたポケベルなぞを確認しながら、

「じゃ、行こうか。」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥はあ。」

一瞬脳ミソに、ブリザードが吹き荒れた。

人の死に目という、普通の人なら、到底平常心など保ってはいられないこの状況も、彼にとっては、全く日常の一幕にしか過ぎないようだ。
しかしまあ、それも彼の職業を考えると、分らぬ気はしないでもないのだけれど。

私の中で吹き荒れる複雑な思いなど他所にして、当の本人の頭の中は、すっかり『お食事モード』に切り替わってるご様子。ごついガタイのガードマンとにこやかな挨拶なぞ交しながら、さっさともう、エントランスのドアを出て行こうとしている。

うーん‥。またのっけから付いて行くのに一抹の不安が過りまくる男である。

 

 さて、そうこうしながらドアを出て、病院の裏手まで廻って来ると、そこからはずっと長い長い下り坂が続いていた。

クリスの病院は、サンフランシスコ州立大学、UCSFの小高い丘の上にあり、ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, ヘイトストリート, ショーウインドウ ディスプレイ,ブティック そこから何ブロックか下りて来ると、シックスティーズのヒッピーで有名なヘイトストリートに入って行く。

その通りには、昔からそこにあった独特の時間の流れを今に刻み続けるように、自己主張の強いサイケデリックな原色の壁絵や、それに負けないユニークな店のサインたちが、ごちゃ混ぜになって並んでいる。
セクシーな網タイツに真っ赤なハイヒールを履いた巨大な足が、いったい何を売ってるのかさっぱり分らない店の頭から、ニュッとその足を組み飛び出している。
何件か先の店の入り口では、何やら怪し気な大きな目がギョロリと、道を行く若者たちを睨んでいる。

とにかく、目に入る物全てがこんな調子で、奇抜な格好の若者たちでごったがえすストリートを行きながら、思わずキョロキョロ目が飛んだ。

「大丈夫?迷子になっちゃダメだよ。」

つかず離れず、半歩前を歩いて行くクリスが、時々後ろを振り返っては優しく笑う。その穏やかな瞳に、ほんの少しのバツの悪さと不思議な懐かしさを感じた。

 

 ヘイトストリートを横に折れて、更にそこから何ブロックか入ると、今度はお洒落なレストランやカフェが並ぶ、雰囲気の落ち着いた通りに出た。
軒を連ねる陽気な明りが、もうすっかり日も落ちた風景を優しい色に染めている。
あたり一面に漂う美味しい匂いと、食事を楽しむ人々のざわめきに、胃の底がキュッと摘ままれた。

「さあ、着いた。ここでいい?」

今日、クリスが案内してくれたのは、こじんまりしたアーリーアメリカンスタイルのレストランだった。
表まで賑やかにはみ出したテーブルでは、溢れかえるサンフランシスカンたちが、美味しいお皿を摘みながら自家製のビールを楽しんでいる。
そんな華やかな雰囲気に、少々場違いな圧倒感を感じて入り口で足を止めた私の為に、クリスが重たい木のドアを開けてくれた。

「サンキュー‥。」

恐る恐る、その背高ノッポのドアの中に足を踏み入れてみると、これまたホール中が、肌の色から髪、目の色まで、何ともカラフルな人たちで埋まってブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, バー, レストラン, グルメ, ナイトライフ, バーカウンターいた。

白人、黒人、ヒスパニック、アジアン、その他諸々‥。
『人種のサラダボール』サンフランシスコにすっぽりとはまり込んだ自分を実感する。

そんな灌漑に浸っている暇もなく、入り口に立った私達を、ヒスパニックのウエイターがテーブルまで案内してくれた。

人ごみを掻き分けながら、昔、トム・クルーズがボトルを回していたようなバーカウンターの前を通り抜け、その奥にたった一つだけ空いていた丸テーブルの前まで来ると、ウエイターは、手に持っていたメニューをその上に置いた。

 

 席に付くと、クリスと私の間にはしばしぎこちない空気が漂った。
そもそも、この丸テーブルというのがどうにも落ち着かない。
角があるテーブルと違って、この丸い、相手との境界線がよく見えないオープンさが、初めてのデートに余計な緊張感を膨らませる。
それに今、改めてこうしてクリスの姿を前にすると、その明るい髪と青い瞳に、やけに自分との違いを感じて来る。おまけに肝心の『英会話』も、緊張で強ばる頭の中では、どうにか教科書にあったセンテンスを辿りながら繋いでるような状態で、どうにも腰の落ち着く場所が無い。

しかし、最初のほうこそ『借りてきたネコ』よろしく不器用なスタートを切った二人の会話も、周りの雰囲気に慣れるにつれて、サイクルが噛み合うようになって来た。そうしてテーブルに料理が運ばれて来る頃には、もう、お互いにもすっかり慣れて、前回の初ミーティングとはうって変わった笑いっぱなしの時間が、小さな丸テーブルの上に流れ始めた。

「僕はね、日本のお寺に入って、坊主の修行をするのが人生最大の夢なんだ。」

チリ・コンカーンとシーザーサラダをごちゃ混ぜにしたような不思議な料理をつつきながら、クリスが突然真面目な顔で、熱っぽく語り出す。
本気なのか冗談なのか、そのわざとらしく作った真剣な瞳につい吹き出し、ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, デート, ロマンス, ワイン, グルメ, キャンドル, シャルドネ, 外国人とロマンス ブロンドを丸めた形のよい頭で一休さんをする、変な『外人』の姿を想像する。

また笑いが止まらない。

それから話は尽きることなく、アメリカ人の宗教観から『シンプソン一家』の謎に至るまで飛びまくり、全く、超高速で、世界一周旅行に飛び回るような時間が行き過ぎた。

とぼけた言葉を連発しながら、時折ふっと、クリスが、その冗談でかけてるようなでっかい眼鏡を外して目頭を押さえる。これは反則である。光の具合で色が変わる深い瞳をふせながら、『床屋に行く時間も無い』とでも言ってるような伸び放題のブロンドを面倒臭げに掻き揚げる横顔に、思わず心臓がドキリとする。

 

 オーダーし過ぎた山のような料理もいつの間にかきれいに平らげて、笑い疲れてレストランのドアを出る頃には、通りはもう、すっかり夜の帳がおりていた。

薄暗い通りに出ると、クリスがふっと私の手をとった。
かじかんだ指先が、柔らかな温もりに包まれる。

そこからは、まるで初めてデートをする学生のように、病院までの坂道をただ二人手を繋いでゆっくりゆっくりのぼって行った。キスもなし、ハグもなし。ただ、お互いの手のひらの温度を感じながら、来た道をテクテク歩き続けた。

 

「また、会えるかなあ?」

アパートメントに向かう車の中、ハンドルを握って前を見つめるクリスがポツンと言った。
優しい沈黙をやぶる掠れた声に、それまで無意識に数えていた街灯から目を離し、ただコクコクと小さく頷く。

「また連絡する。」

エントランスの前に車が着くと、カーシートを解く私に向かって、クリスがほんの少し体を傾けた。どちらからともなくハグを交す。頬にふれた大きな肩から微かに柑橘系のコロンが香った。

私が車を降りると、クリスはまた、バタバタと病院に戻って行った。真っ白なカムリのテールライトが、一ブロック先の角を左に曲がって行く。点滅する黄色のランプをぼんやり見送りながら、胸の中に不思議な淋しさが広がった。

さて、カボチャの馬車は行ってしまった。明日はまた、お猿がフレッドの所から戻って来る。今日はゆっくり睡眠をとって新しい明日に備えよう。これから迎える毎日を、ワクワクした輝きに塗り替えて行けるように。

 


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[2012/03/24 11:16] | エピソード | トラックバック:(0) | コメント:(0) | page top↑
エピソード6
 前回のミーティングから長らくの時間を置いて、今朝やっと弁護士事務所から、VAWAのビザ申請の手続きに取り掛かるという連絡を受けた。


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この、私がお世話になる『日本町アウトリーチ』は、サンフランシスコのジャパンタウンを拠点とした、非営利で法律問題の相談をしてくれる弁護士集団だ。
彼らには、シェルターにいる時から、ベビーの親権問題や、その他法律問題に関して助けてもらっている。

しかし、何しろこの事務所は非営利だという事もあって、とにかくそこにいる弁護士全てが忙しい。普段、何か問題が起こってこちらから事務所に連絡を取ろうとしても、担当弁護士に直接電話が繋がるなんて事は、奇跡に近い神業である。
通常は、受付で回してもらう彼らのボイスメールにメッセージを残し、その後は、ただひたすら向こうからの連絡を待つというパターンが殆どだ。

だが、待つとは言っても、もちろんここはアメリカだという事を忘れてはいけない。ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, シェークスピア, 役者, 舞台俳優ただぼーっと待っているだけでは、欲しい物は何も手に入らない。

なかなか相手からの返事が入らない時には、何度も何度もボイスメールに同じメッセージを吹き込んで、自分がどれだけ困っているかを切々とアピールする位の厚かましさと、パフォーマンス力は、生活の基礎知識として持ち合わせておいたほうがいい。

サンフランシスコに来てから、何だか妙に、『鳴かぬなら、鳴かせてみせよホトトギス』という言葉が頭の中を通り過ぎる今日この頃だったりする。

まあそうは言っても、実際このアウトリーチには、ボランティア精神に富むエナジー溢れるアジア系弁護士たちが揃っている。特に、彼らは虐待関係のケースには強く、今まで負けた裁判などないそうだ。

今日電話をくれたのは、私の担当弁護士のインターンアシスタントをしているティファニーだった。彼女は中国系二世のアメリカ人で、まだ、ロースクールの最終学年にいる二十歳そこそこの若者だ。しかし、事務所で見る彼女の姿はキリリとスーツに髪を結い、もう、なかなかローヤー振りも板に付いている感じである。
早速彼女からは、VAWA申請の為の、山のような資料集めの『宿題』を申し付けられてしまった。

 

 ところでこの『VAWA』というのは、これはつまり、バイオレンス・アゲインスト・ウーマンズ・アクト。家庭内暴力を受けて、その配偶者から逃げ出して来た外国人女性の為に設けられるビザ枠の事だ。こちらで産まれた子供がいたり、事情があって、自分の国に帰る事が出来ずにこのアメリカに滞在する必要のある外国人女性たちに適用される。

シェルターに入ると、ビザを持たずに逃げて来た女性たちは、最初に、このVAWAを申請する事になる。そしてそれが移民局に認可されると、そこからグリーンカードの手続きが、このVAWAを元に進められて行く。
通常、グリーンカードの申請をする場合、米国市民や会社の雇用主などのスポンサーを必要とするケースが大半だ。しかし、一旦このVAWAが承認されると、グリンカードの申請は、自分自身をスポンサーとして移民局に書類の提出が出来るようになる。

しかし、もちろんこんな魔法のようなVAWAのビザも、無料でくれる物ではない。
今日、ティファニーから申し付けられた資料のリストを並べると、しっかりレポート用紙、びっしり1枚分以上にもなった。

ちなみにその内容といえば、出だしにある、戸籍やパスポートのコピーは、まあお安いご用だとしておこうブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, グリンカード, グリンカード手続き, 移民,  アメリカ移住
しかしその後には、日米両国における過去の無犯罪暦の証明レポート、指紋登録、結婚していた時に撮った写真やベビー誕生に関する証明資料、一緒に住んでいた事を証明する郵便物、夫婦共同銀行口座のナンバー、ウンヌンウンヌン‥と続いて行く。

元来、『無精』が服を着て歩くこの私、果たしていったい、これを全部集めるのに、何百年かかってしまうのだろう‥。
実際、この時点でもう既に、かなりヒトゴト・モード入る気分である。

しかし更に容赦はなく、この『ティファニーのリスト』、まだまだ果てなく続いて行く。
移民局に出す証人達の証言、結婚や家庭内暴力の様子をレポートしてくれる友人たちの手紙。そして当然のごとく、それら全ての英語訳。

うーん。もう冬眠にでも入ってしまいたい気分‥。

ええーい!とにかく今は、そんな事を言ってる時じゃない。
母は強し!お猿とこれから暮らして行くには、何としても、このVAWAが承認されなければ困るのだ。

今のこの私の身、生かされるも殺されるも、州法律様のお心一つにかかっている。

 

 シェルターに逃げた後、離婚や親権の裁判は、自動的にカリフォルニアの法律で進められる事になった。その為、お猿の親権についても、彼女が十八才になるまでは、父親の権利も尊重されて、母親だけが娘を連れて勝手に日本に帰るなどという事はもう出来ない。
もし仮に、強行突破でそういう事をしようものなら、『キッドナップ』、つまり、誘拐の罪で起訴される事にもなりかねない。
特にあのフレッドの事、下手な事をすると、次にはいったい何を仕出かすか分った物ではない。

そんなわけで、今の私の生活には、ビザの問題に加えてこの親権の問題も重く重くのしかかっている。
アメリカの法律というのは州ごとに違うのだけど、このカリフォルニア州の法律では、子供の親権は基本的に両親で分けるという考え方がある。お陰様で今の私、サンフランシスコを離れてアメリカ国内のどこかに短い旅行をする時でさえも、ベビーを一緒に連れ出すのには、『父親』のサインが入った書類を持ち運ばなければいけない始末である。

ベビーを連れて日本に帰るという事も、『父親』の同意がもらえれば話は別なのだけれど、まあ、あの阿呆のフレッドが、そんな同意書などに喜んでサインしてくれるとは思えない。

今まで、このような『スポコン魂』とは無縁の人生を送ってきた私だけど、これからはそんな事も言ってられない。
特にこのアメリカでは、ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, 裁判, 親権, アメリカで離婚コートで人の情けなど期待するのは、ネコにお手を期待するのと同じことだ。
判事の判決が出た瞬間、自分の娘の顔さえも一生見る事が出来なくなるような緊迫感と厳しさを、これまでイヤという程実感させられて来た。
三十の半ばにして、産まれて初めて、『法律』という物の力の絶対さを思い知った私である。

 

 のっけから頭がクラクラして来る資料集めではあるけれど、いつまでぼやいていても仕方がない。

小さな頃から込み入った仕事をしようとすると、いつも最後には必ず収集が付かなくなり、途方に暮れるのが得意な私だった。そんな私を見兼ねて、まだ今の私と同じ位の年だった母親が、幼い私に魔法の言葉をくれた。

『簡単な事から取り掛かってみよう!』

当たり前のことだけど、簡単な事からリストを作って一つ一つ取り掛かって行くと、何となく物事が自然に片付いて行くような気がする。
人間の『刷り込み』とは恐ろしい物で、幼い頃に聞いた、こんな親の言葉を今でも忠実に守りながら、辛うじて、人並みの作業効率を保持出来ている私である。

そんな事を考えながら、今、自分の娘となったお猿の顔を見る。
これがまた彼女も、母親に負けず劣らず、かなりののんびり屋さんのようだ。
母から貰った魔法の言葉、どうやらこれからファミリーの歴史の中で、母から子に受け継がれる言葉となって行くようだ。

『簡単なことから取り掛かってみよう。』

さて明日は、ダウンタウンの日本領事館まで、離婚証明書を取りに行くことにしよう。

 


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[2012/03/25 09:27] | エピソード | トラックバック:(0) | コメント:(0) | page top↑
エピソード7
 最初は一人と半分きりで始めたサンフランシスコの生活にも、最近では、少しづつ話をする友人ができて来た。


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ひと月前には、カレッジの廊下でばったり、シェルターで一緒だったヨンに再会した。

韓国から来ていたこの彼女とはなぜだか妙に気が合って、シェルターでは、夜、お猿が寝てしまった後、二人でよくかたまって、遅くまで喋っていた。

ヨンの元旦那というのも、これまたひどいヤツだった。
彼女がシェルターに逃げ出すと、彼女の荷物を一切ゴミ袋に詰め込んで、ジャパンタウンの弁護士事務所に投げ込んで行ったというろくでなし。
夜一人、そのゴミ袋の中から、乱暴に放り込まれてクシャクシャになった真っ白なウエディングドレスを取り出して、丁寧にアイロンをかけて整えていた、彼女の悲しい横顔を今でも覚えている。

この頃ではヨンも、たまにふらりと私のアパートメントに立ち寄って、しっかり晩御飯を食べて行くようになった。
ヨンの新しい生活も、ここサンフランシスコで始ったばかり。前向きな彼女を見ていると、私ももっと頑張れるような気がして来る。

 

 また最近では、日本にいた頃『メルトモ』していたジョシュアにも、ここサンフランシスコで会うようになった。
彼とのご縁も、これまたちょっとした神様の悪戯だったりする。

ジョシュアとはまだ、私が日本でインターネットを始めてホヤホヤだった頃、ー今考えると赤面物のー、ペンパル掲示板のコーナーか何かで知り合った。偶然にも、私が産まれて初めて『外国』に向けてEメールなる物を書いた、『遥か遠い異国の外人さん』だった‥筈である。

しかしそれから私の人生、ちょいと間違って足を踏み込んだジェットコースターのレールの上で、突然それがとんでもない方向に向かって暴走を始め、はっと次に気が付いてみれば、ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, ベイエリアマップ, 地図, マップ ‥いつの間にか、ここ、遥か遠いサンフランシスコの街角で新しい生活が始まっていた。

それまで『宇宙の果てにある異国のペンフレンド』だったジョシュアは、たまたま、このダウンタウンから車で二十分程南に下がった海岸線の街、パシフィカに住んでいたりしたわけで、結局、以前、二人の間にあった、『何百マイルを越えた友情』などというロマンティックなファンタシーは、呆気無く消えて無くなった。

今では、その彼がこうしてトラックの横のシートに座り、窓から立てた中指で他の車を罵倒しながらフリーウエイを運転していたりする。
人の縁の行方なんて、どこでどうその糸が絡まり合っているのか、予想もつかぬ物である。

しかしまあそんな神様の悪戯も、強ちただの偶然だと笑ってばかりもいられない。実際、このジョシュアの存在は私にとって、まだ右も左も分からないこの異国の地で、貴重なカーナビを手に入れたような物だった。

アメリカでのお約束、週末の、山のようなグロースリーショッピングも、ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, グロースリー, 買い物, グルメ気が向けば彼のトラックで黙々と手伝ってくれる。
アパートメントでは私が何かを壊す度に、電話一本で駆け付けて、片っ端から直して行ってくれたりもする。
『一家に一台』、女性の一人暮らしには、なかなか小回りのきいた大変重宝なヤツである。

最近では、彼に電話をする度に、受話器の向うの寝惚けた声の第一声は、"hey, what did you break today?"
‥とほほ。

ところで、ジョシュアの鼻には誇らし気にデーンと大きな傷跡がついている。
普段は気のいい彼も、基本的には血気盛んなヤンキーボーイ。昼間はサン・ホゼのトヨタのディーラーで『おとなしく』メカニックなどやっていたりするのだけど、週末の夜には男友達とダウンタウンのバーにくり出して、飲んで騒いで、他のクループと喧嘩ばかりしてる仕様のないヤンチャ坊主である。
鼻の傷は、そういった喧嘩の最中、割れたビール敏で殴られてできたそうで、全く、『お前は軍鶏か!』と一言聞いてみたくなる奴だ。

しかし、そんなアグレッシブな外見の下には、自分の家族や友達をとても大切に思う優しい顔が隠れている。何より、ウチのお猿と大の仲良しだ。
新しい玩具が手に入ると、ちっぽけな彼女と夢中になって遊んでいる。お猿もすっかりそんなジョシュアに懐いている様子で、不思議な組み合わせではあるけれど、なかなか見ていて微笑ましい。

 

 先週はまた、ベビーの親権のコートでヘイワードまで呼び出された。
アメリカに渡って最初の一年を過ごしたヘイワード。後から聞いた話では、ここはベイエリアの中でも『インダストリアル地帯』と呼ばれる場所になっていて、環境も、その北にあるオークランドに次いでよくない場所だったりしたそうだ。

サンフランシスコに来てからは、皆が口を揃えて『よくあんなとこで、今まで生き延びてこれたねえ。』なんて‥、当のアメリカ人たちにも感動されまくってしまう始末。
まあそんな周りの反応も、今考えれば至極当たり前の物である。

ヘイワードの暮らしの中では、夜になると、寝室の壁の向うで始るガンファイトの音がお約束だった。
少し前に、日本で生まれ育ったアメリカ人の女の子が、家族でアメリカに帰って来た途端連れ去られ、その死体が、サン・ホゼの山中で発見されたという事件があった。その、被害者の少女が連れ去られた通りというのが、何と、ウチのアパートメントのすぐ前の大通りであったりした。
それから何日も経たない内に、今度は、何ブロックか先の家の玄関先で、高校生が同級生を銃で撃ち殺し、辺り一帯、野次馬の人だかりが出来ていた。
毎日、何かしら三面記事の話題作りに大貢献のヘイワードである。

『恐い物知らず』の裏側にあるのは、結局『無知の浅はかさ』。
街に暮すアメリカ人なら誰もが後込みするようなこんなシュールな環境にいても、私は素直に、『これがアメリカだ』と思っていた。そしてまた、夜などふらふら結構一人でコンビニなどに出歩いてたりしたのだから、今考えるとちょっと恐い‥。

お陰様で、今ではそんなナイト・メアも遠い過去の一ページになりつつある。
まあ暫くはまだ、こういったコートの問題で、完全にご縁を断つに至るまでには長い時間がかかりそうなのだけれど‥。

 

 さて、いつも気が滅入るこのコートへの出頭。今回は、丁度仕事がお休みだったジョシュアが、応援も兼ねて、ヘイワードまでのアッシー君を申し出てブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, フリーウエー, ヘイワード, サンフランシスコ, ドライブ, アメリカ高速道路くれた。

他にも、シェルターからスタッフたちが応援に駆け付けてくれ、最近仲良しになった通訳のヨーコさんも、この日は自分の担当じゃないにも関わらずわざわざバークレーから出て来てくれた。

人というのは暖かい。

いつもはかなりブルーの入るこのコートでのヒヤリング。今回はそんな盛り沢山の応援に励まされて、勇気百倍元気が出た。

 

 ヘイワードのコートでは、朝の開廷と同時に、五つ程あるコートルームに約十組ずつのカップルが割り当てられて、そこで順送りに判決をもらう仕組みになっている。
順番を待つ他の組が後ろで聞いてる中、名前を呼ばれる順に判事の前に進み出て自分たちの問題を話して行く。
さすがにファーストフードのドライブ・スルーを産んだ国、つい思わず、『ポテトも付けて下さい』なんて言いたい衝動に駆られてしまう。

コートルームに入ると一番に、デーンと正面に掲げられた大きな星条旗が目に飛び込んで来る。そしてその右横一段高い所に、丸いドーム天井から落ちる厳かな光を浴びながら、重々しい、立派な彫刻の施された判事の座る席がある。そこに黒衣装姿のブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, 法廷, 裁判, 親権, アメリカ国旗, 裁判所, ヘイワード判事が登場すると、審判の席にいる者一人一人が名前を呼ばれて起立をし、左手をあげて宣誓を述べて行く。

一見、何ともドラマティックな光景が展開する。

しかし、そんな気高い演出も、このヘイワードにかかっては全てが空振りに終わっているような気がしてならないのは私だけだろうか?

まるで古い教会のようにピンと張り詰めた威厳をたたえるこの法廷の雰囲気も、そこに集まる人たちにとっては、全くの『ブタに真珠』でしかないようだ。
映画の中に見る、パリッとスーツに身を固め、颯爽と廊下を行き来する人たちの姿なんて、いったいここでは、殆どが、弁護士やコートの職員といった特別な人たちのユニフォーム。一般に裁判を受けに来る人たちといえば、『ちょいと隣の家にでも遊びに来ましたよ』とでもいった風なヨレヨレのジーンズに擦り切れたジャケット。極めて素朴な『田舎の面々』が並んでいる。

初めてこの法廷に来た時には、そのあまりの裁判のカジュアルさに、気分も全く拍子抜けした。
しかし今ではこういった様子にも慣れっこだ。こんな彼らの気楽さも、基本的にアメリカ人にとっての裁判なんて、トイレに行くのと同じ位の日常だったりするのだろうと、一人納得する今日この頃である。
おまけにそんな彼らの中には、裁判に弁護士もつけることなく、自分で捲し立てまくる輩がいたりするのだから、何とも長閑な物である。

 

 さて、そうして朝も早くから順番を待つこと三時間。時計の針が、もうあと十五分で正午を指そうとした時、いよいよフレッドと私の番が来た。
名前を呼ばれて、弁護士のディーンと、今日の通訳を担当してくれるよし子さんと一緒に前に進み出る。
この、今私を担当してくれているディーンも、日系二世のアメリカ人。応援に駆け付けてくれたヨーコさんも含めて、小綺麗に身なりを整えたサンフランシスコからの日本人四人組は、このラフなラティーノ・ブラックで埋る空間の中ではハッキリ言って浮きまくっていた。

判事の前に進み出て、厳かな宣誓と共に審議の時間が始ると、ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, 天ぷら今回もフレッドが、天ぷらを食べて来たのかと感心する程、絶好調な口振りでペラペラ捲し始めた。

彼もまた、弁護士などは付けていない口の一人である。 そしてまた今回も、あの阿呆のフレッドの素晴らしい想像力にはほとほと感心させられた。

彼の口が開いた途端、そこからは次々に、私本人さえも知らなかった、数々の『過去の私の武勇伝』が飛び出して来た。
そうだったのか‥。日本にいた頃の私といえば、ドラッグの売買に手を染めて、その中毒にボロボロになりながら、さらに、アルコール中毒にも苦しむ辛い過去を潜り抜けて来た哀れなヤツだったのか。
はて‥?記憶喪失にでもなったのかしら?そんな凄まじい過去の時間も、本人の記憶にはさっぱり残っていない。今、初めて彼に聞いて知る事が出来た『私の暗い過去』。わざわざ教えて頂いて、彼にはお礼を申し上げなければいけない。

‥なんて。そんなシュールな日本人がいたならば是非一度お目にかかってみたいものだ。

彼も、エンジニアなどという技術畑の仕事ではなくて、もっと、その創造性を生かせる職業についていたなら、案外、莫大な大成功を納めていたかもしれない。
これは皮肉や冗談で言っているのでは決してなく、真摯に『心から』敬意を持ってそう思う。

そうして一通りの筋を話し終えると、フレッドは、またその素晴らしい想像力に拍車をかけて行くように、今度は御丁寧にも、最近ビジテーションのベビーの受け渡しに立ち会ってくれるジョシュアについても似たようなストーリーを作り上げて、気の遠くなる様な暴言を吐き出した。

「そんな友人が周りにいる女の生活環境は、ベビーにとって安全な物ではない。自分は彼女に、定期的なドラッグ検査を受ける事を要求する」ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, 裁判, 裁判官

そこにいる物が、皆呆れてこの大ほら吹きの話しが終わるのを待つ間、思わず判事の目の中に走る笑いが見えた。

『桜吹雪』は、このアメリカでも健在のようである。結局今回『も』ママさんチームの勝ちだった。

今日の判事の判決では、次のコートまでの一時的な物ではあるけれど、ベビーと一緒に暮らす権利のフィジカル・コストディーは、全て私が頂く事となった。

 

 サンフランシスコに帰るフリーウエイの道中、コートの過程を聞いていたジョシュアが、開口一番、

"we got a job to teach him that the lier in the court will be sent to the prison to be a wife of a big black guy!"

(コートで嘘を並べたてるようなヤツの運命なんざ、刑務所に送られて、でっかいブラックのホモの餌食にされるのがお決まりだってこと、フレッドに教えてやらなきゃな)

なんてことを言い出した。
それに続いて、早速『ジョシュア・リベンジプラン#1』が彼の口からこぼれ始めた。

サンフランシスコのFMステーションの中には、結構えげつない番組がオン・エアされている。そんな中、最近彼が気に入って聞いているのが、今、サンフランシスコの街中で見かける、大きな看板に、二人のでっかいお腹をしたヌードの男性が向かい合って写り、ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト,坂井浩子, ひろこ, hiroko sakai, hiroko, ラジオマイク, FMラジオ『モーニングシックネス・コンテスト』(つわりコンテスト)なんて歌っている番組だ。

そこでは知り合いの生活や秘密を暴露して、そして更に、面白可笑しくえげつない枝葉を付けながら、その『生け贄』を料理して行くコーナーがある。
一度ターゲットに取り上げられてしまうと、もう御愁傷様としか言い様のない悲惨な目にあわされるのがここでは当然のお約束。その人の元には、寝起きろうが仕事中だろうが、突然ラジオからインタビューの電話が入り、露骨な質問が飛んで来る。そしてそのびっくり箱は、後からラジオでベイエリア中にオンエアされて、中には暫く友達の前にも顔を出せなくなる人もいるというのだから、洒落で済まされる話じゃない。

全くアメリカ人というのは、目的の為には『ここまでやるか‥!!?』ってな事でも、案外平気でやっちゃうもので、玉子が先か鶏が先か?法の規制の厳しさも、ここらへんのイタチゴッコが全てを物語っていたりする。

「コートが一段落したら、フレッドが今まで君にして来た仕打ちを一切まとめて、レポート投書するからね。」

そんな事を真顔で話すジョシュア君。
どこまで本気なのかは彼のみぞ知るトコロである。

そうして帰りの道中は、涙を流し、二人で気違いのように笑い転げながらフリーウエイを帰って来た。
もし、途中でCHPに車をとめられてたりしたならば、その『ハイ』さ加減に間違いなく、それこそ『ドラッグ検査』なぞを要求されて、フレッドに次のコートで恰好の材料を与えていた事だろう。

 

 窓の外に目をやると、頭の上には雲一つないカリフォルニアブルーの空が広がっていた。
明日も天気になるといい。

 


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[2012/03/26 12:42] | エピソード | トラックバック:(0) | コメント:(2) | page top↑
エピソード8
 今日は久し振りに、弁護士と、ケースの進行具合についてミーティングを持つ事が出来た。


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 ディーンのオフィスに通されて、どうにも臍の落ち着きの悪い深々としたクライアント用の椅子に腰を下ろすと、開口一番、先日からティファニーが進めてくれていたVAWAのビザの申請が、やっと移民局に承認されたという嬉しい報告を聞いた。
これからは、グリンカードと労働許可証の申請に取り掛かって行くという。
これで私の身の置き所にも一つの区切りが着いたようで、ほんの少しほっとした。

しかし、まだまだ道のりは遠い。
何といっても最終のゴールにあるのは、このアメリカの永住権、『グリンカード』の取得である。これを取らない内には、仕事をするのにもいちいち、移民局に、労働許可証明なる物をまた別に申請しなければいけない。
このアメリカのお役所仕事の事、これからのプロセスにいったいどれだけの時間がかかって行くのか‥。

基本的に、会社にかかってきた電話を、なるべく自分の責任から遠い所にたらい回しにするのがアメリカ人だと思っている。
何しろ、今いるアパートメントを紹介してくれた日本人エージェントの口癖が、『なにせ、アメリカ人のする事ですから。』‥うーん。
まだまだ道のりは果てしなく、遥か遠くの彼方まで続いて行く予感がする。

「今年の終わりまでには、労働許可証がおりればいいね。」

焦る心を見すこすように、ふいにディーンがニッコリ笑って言った。
なんとも『頼もしい』お言葉である。とほほ‥。

まあ、何はともあれ、とにかくここでVAWAが無事承認されたということは、このサンフランシスコ生活の中に刻むとても大きな第一歩となった。ディーンのちょび髭顔に飛び付いてキスなんかしちゃうのは遠慮しておくにしても、今は、スキップしながらオフィス中を駆け回りたい気分だ!

 

 一通りビザの話を終えると、今度はおまけのキャンディーをくれるように、ディーンが手に持ったファイルの中から一枚の書類を取り出した。

「サプラーイズ!」

ふざけた調子で彼から手渡された書類に目を通してみると、それは判事のサイン入りの、正式な離婚の証明書だった。ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, 離婚, アメリカで離婚

暫く前のコートでは、フレッドが『アノーメント』ー結婚の事実を取り消す申請ーを出していた。『この結婚については、自分はこの日本女性に騙されたような物で、これは無効にするべきだ‥うんぬんかんぬん。』

しかし、当然そんなお馬鹿で自分勝手な言い分がこのアメリカ版桜吹雪の下で通る筈もなく、そんな彼の申請は、その場で呆れ顔をした判事から、思いっきりの却下を食らっていた。

‥と、ここまでは、裁判の成り行きも何とか把握が出来ていた。

しかし、それから後の離婚の審議に入ってくると、早口の英語で専門用語が飛び交う中、正直言って、私にはもはや何が何だかさっぱりついて行く事が出来なかった。
コートがお開きになった後も、次のクライアントとのミーティングに向けてピリピリバタバタしているディーンに、暢気に説明なんぞをお願い出来る雰囲気ではなく、結局、その日はうやむやのままコートを後にした次第だった。

本来、カリフォルニアの法律によると、一旦離婚を申請してから完全に離婚が成立するまでには、六ヶ月の据え置き期間が置かれるという。
気軽に結婚離婚を繰り替えす直情型のアメリカ人。途中で気が変わってまたくっ付いちゃうなんてこともままあるようで、それをまた、『いちいちコートで相手なんてしてられないよ』といった所のシステムだったりするのだろう。
私も、このフレッドとの離婚についてはまだまだ時間がかかる物だと、少々ダークな気分になっていた。

しかし、寝耳に水で飛び込んできたこの嬉しいお知らせ。さっきのスキップに加えて『バンザイ三唱』もおまけに付けたい気分である。

どうやら私の場合、この『六ヶ月の据え置き期間』の中には、結局、シェルターに逃げていた期間などもカウントされていたようだ。
思いもかけず、晴れてひとり身に戻った私。世界中の自由をこの手に掴み、空にも飛んで行けそうだ。

 

 アパートメントに戻ると、早速この報告をクリスにメールした。今ではもう彼も、すっかりわたしの生活の中にいる。
相変わらずの殺人的なスケジュールの中では、普通の恋人たちのように、それ程頻繁に顔を合わす事は出来ないのだけれど、しかし、たまーに気が向けば、‥と言うより、『仕事の帰りに余力があれば』、シフト明けのその足で、部屋に立ち寄って行くようになった。

最近のクリスは、私が作る『シャパニーズフード』が痛くお気に入りのご様子だ。
箸の使い方もなかなかサマになって来た。

卵焼きや肉じゃがなど、何でもない日本のお惣菜にいちいち感動し、『これは何?』と珍しそうに、青い瞳をクルクルさせながら聞いて来る。そしてまた、その先入観の無い異食文化に対する興味からは、ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, 坂井浩子, ひろこ, hiroko sakai, hiroko, 日本食, 日本料理, ソバ, 食卓今までこちらが思ってもみなかった独創的なアイデアが飛び出して来るから面白い。

緑茶には必ず砂糖を入れる。ご飯はおかずと食べる物じゃなくてマヨネーズと醤油をかけるとそれで立派な一品扱い。スティックサラダだろうが餃子だろうが、何にでも取り合えず海苔を巻いてみる‥等々。
これがまた真似してみると、なかなかイケてしまったりもする。

しかし、そんな彼の『お気に入り』の中でも、ぜひ止めておきたい物は一つある。それは、オカカのおにぎりを、ドロドロになるまで紅葉おろしを加えたポン酢にたっぷり浸して食べる事。
見ているだけで高血圧に魘される。うーん。

 

 今日Eメールを受け取ると、早速クリスは仕事の帰りに寄ってくれた。
離婚のニュースに思いがけずご機嫌よろしく、『これで、一つの壁が消えたね。』なんて、ニッコリ笑って言ってくれた。

ふーん‥。少しは気にしてくれてたんだ。
真直ぐな瞳に心がほかほかあったかくなった。

 


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[2012/03/27 08:33] | エピソード | トラックバック:(0) | コメント:(2) | page top↑
エピソード9
 お猿がまたフレッドの所に行く今週末の午後は、クリスについて、チャイニーズの双児の姉妹、メイとリンのバーベキューパーティーにお邪魔した。


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 このキュートな一卵生双生児の彼女たち、本当に全く同じ顔をしながら、二人揃ってクリスと同じ病院でドクターなぞをやっている。

あどけない顔にお揃いの眼鏡をかけていつもニコニコくっついてたりするのだから、そこに双児さんのお約束、『どっちがどっちだか分からない』はえてしてブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, 双子起こる。
そしてまたそんな周りの混乱を、やっぱり二人でくっついてクスクス楽しんでいたりする、なかなか悪戯な『お人形さん』たちなのだ。

まあ、内ではこんなチャイナドールのように可愛い顔を見せてくれる彼女たちも、一旦クリニックで仕事に入れば、きりりと白衣に身を包み、テキパキドクターなんてやってしまう。なかなか奥の深いパーソナリティーを秘めた二人である。

余談になるが、こんな『可愛いドクター』がいれば、『パブロフ犬もどきのドクター』もいる。
クリスというのは、本当にいつも『忙しい』が服を着て歩いているような男である。
病院用とクリニック用、腰からぶら下げた二つのポケベルには、オフでもかまわずひっきりなしに呼び出しのベルが入って来る。そうしてベルが鳴る度に、御飯を食べていようが何をしていようが、『ちょっと待ってね‥』とあたふた携帯電話を取り出して、受話器に向ってテキパキ指示を与えて行く。

言わずもがな、そんな何かに憑かれたような彼の仕事のスケジュールでは、これまで二人で過ごす『甘い週末の昼下がり』なんてものは全くの夢物語だった。
つまり、今日は私達にとって、初めて一緒に過ごす週末になる。
胃の底にかりっとこそばゆい物が走っていく。

 

 さて、今日のパーティーの会場は、双児のお姉さんのメイの家で開かれた。
彼女は一ヶ月前に結婚したばかり。今日はその、新婚ホヤホヤ幸せカップルの新居のお披露目を兼ねた集まりにもなっている。

彼女の新居は、サンフランシスコのプレシディオ地区にあった。

ここは元来、内海の静かなサンフランシスコ湾に臨み軍の施設が設けられていた土地を、後に一部、その建物ごと、民間に住居として解放したという美しい場所だった。
深いブルーの海を遥かに見渡しながら、ミリタリーの面影を残す煉瓦や白い壁のコロニアル風の建物が、芝に覆われた広大な敷地の中に整然と並んでいる。ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, プレシディオ, ゴールデンゲートブリッジ
そこにはもう、あの『遥かなる旅立ち』のスクリーンがそのまま広がっていた。建物の陰からは、今にも、真っ白な軍服に身を包んだリチャード・ギアが顔を出してきそうだ。

クリーム色の壁に、パッチワークのタペストリーで可愛く飾られたメイの家も、元は、ミリタリーの軍人たちが住んでいた宿舎だった。
海岸線を見下ろす小高い丘の窓からは、遠くにゆったり、雲一つ無く澄み渡った青い空をバックにして鮮やかな朱色に輝くゴールデンゲート・ブリッジが見えている。

 

 今日は、バーベキューと言ってもそれ程本格的な物ではなく、玄関先に置いた小さなコンロで肉や野菜を料理して、そこで焼けたそばから部屋の中に運び込んだものを、後は自由に、皆でお皿を突つき合うといった形式だった。
少しだけ馬鹿騒ぎの苦手なクリスがコンロの番を買って出た。
もちろん私は横のポーチに陣取って、パーティーが始まった後はビールなど片手にのんびり昼下がりの日光浴を楽しんだ。

心地よい空の下、あったかなお日様がぽかぽか顔に当たってくる。
庭から続く細い砂利道の両脇には、幼い頃に遊んだもう名前も忘れた草花たちが、クスクスお喋りをするように優しくゆれながら風に頭をそよがせている。

コロナの瓶に口をつけてそのままグイッと顔を上げる。太陽が眩しく目を射した。
炭の焼ける匂い。青臭く乾いた芝の匂い。柔らかな記憶の扉がぼんやりと開いていく。
そんなのどかさにピリリとスパイスを効かせるように、ドアの中から陽気に騒ぐ声が漏れて来る。

さっきからクリスは、何やら神妙な面もちで、コンロの上の肉の焼け具合の『検査』を始めた。真剣な目で一つ一つの肉を裏返しながら自分の仕事をチェックする。風に吹かれてキラキラ輝くクリスの前髪の先っちょを眺めていると、ふっと笑いがこぼれてきた。
何でもない光の動きがどうしてこんなに優しいのだろう?

坂の下に目をやると、少し遅れてやってきたブラッドの姿が見えた。
彼の『ボーイフレンド』のウイリーがこちらに向かって手をふっている。彼らも揃ってクリスの病院で働くドクターたちだ。

彼らとは以前、クリスと四人で『ダブルデート』なる物をした事がある。
二人とも、すらりと背の高いハンサムな男性で、サンフランシスコでもお洒落なゲイの集まるカストロ・ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, ゲイ, ゲイのフラッグ, カストロストリート, レインボーフラッグストリートの通りを一緒に歩いていたりなんかすると、かなり『絵』になるカップルだと思う。

しかし、世の中の女性を思うと、この美しい二人が『ゲイ』であってしまう事実なんて‥。何だか、貴重な資源の損失をしているような気にさせられるのは私だけなのかしら?

まあ、何と言っても、ここは色んな『愛の形』溢れるサンフランシスコ。そんなお世話は反って野暮だというものだろう。

クリスも彼等とは馬が合うようで、病院でも何かしら皆でつるんでいる事が多いと話していた。
ちなみにクリスは至ってストレート‥の筈である。がしかし、しつこいようでも、あくまでここは『サンフランシスコ』。目だけはいつも光らせておくようにしておこう。‥なんて。

何よりも、彼らの持って来たサーモンのお醤油漬けは素晴らしかった。
新鮮なサーモンを、お醤油とニンニクとネギでマリネしただけの簡単な物だけど、魚の街、日本は博多から来た私にとって、この魚の匂いは正に『ネコにカツブシ』。クリスがそれを焼きながら、『君はシャパニーズだから、ソイソースでマリネしたフィッシュはとっても好きだろう?』なんて、こっそり横に置いたお皿にレモンをのせて、最初の一切れをキープしてくれた。
香ばしく染みた炭の香り、プラス、そんな優しさのスパイスがふられた熱々のサーモンを頬張ると、口の中にじゅっと懐かしい味が広がった。

 

 「七月四日は何してるの?」

山盛りの肉も殆ど片付き、バーベキューの炭も終わりに近付いた頃、ほろ酔い気分のクリスが独立記念日の予定を聞いて来た。

「独立記念日なんて、日本人の私にとってはあんまりピンと来ない祭日だよね。お猿もフレッドの所に行っちゃうし。」

と、軽く笑って答えると、

「ハニー、アメリカ人にとって、七月四日はとっても大切なホリデイなんだよ。」

と、柔らかなトーンの言葉が返ってきた。

ちなみにこの『ハニー』という言葉、日本人の私にとっては、今だに臍の座りの悪い英語のサウンドの一つである。しかし、それがなぜかクリスの口から飛び出すと、ロマンティックに響いて来たりするのだから私の耳も気紛れなヤツだ。

「毎年独立記念日には、僕のコンドミニアムから湾を挟んでフィッシャーマンズ・ワーフの花火大会が楽しめるんだ。今、家族で、独立記念日には花火を見ながら、デッキでバーベキューでもしようかなんてプランを練ってるんだけど。もしよかったら、今年は君にも来てほしいな。」

『家族のバーベキュー?』
これって、クリスのご両親に『それとなく』会う事になるのかしら?
これはちょっとした一大事。 ‥とまあ、そんな事も、目の前にコロナの空き瓶が三本も並んだ後では全てがOKの気分だったりする。
景色も気持ちよく回っていることだし、『多分ね‥。』なんて、今は笑いながら、明日の事はまた明日考えようと思った。

 

 ふいに目の前が、キラキラ輝くシャボン玉でいっぱいになった。ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, シャボン玉

「いつまでそんな燻った炭を見つめながら、二人でクスクスやってんの?もうビンゴ始っちゃうよ。」

虹色のベールの向こうから突然割り込んで来た声に目をやると、そこには、太ったウサギのケージの前に、シャボンのボトルを手に持ったリンが大きな笑顔を浮かべて立っていた。

それを合図にすっとクリスが私の手をとった。

人が溢れる部屋の中に、クリスと手をつないで入って行く。
少し照れて俯いた顔に、ニッコリ笑顔がこぼれて来た。

 


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[2012/03/28 13:42] | エピソード | トラックバック:(0) | コメント:(0) | page top↑
エピソード10
 VAWAの申請も無事通り、いよいよ待ちに待ったグリーンカード申請の為の書類集めが始まった。
今週は、それに添えるドクターのメディカルチェックに走り回る一週間となった。


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 ところで色気の無い話だけれど、アメリカの医療費は冗談のように高い。
それに加えて、こんな永住権を取る為の検査などに保険の適用は当然無く、結局このチェックの費用、実費で$300以上はかかる事となった。グリンカードの申請料を合わせると、今までに軽く$1000はかかっている。

半年前にアウトレットで手に入れたハッシュドパピーのブーツを履き潰し、ただ同然で手に入るスナズリ料理を工夫して食い繋いでいる私にとって、最早この『天文学的』な数字の羅列、脳みそ爆発一歩手前であったりする。
まあこれも、『貧乏人はアメリカに来るな』といった移民局からのメッセージだったりするのだろうか。

この検査の事を聞いたクリスは、『そんな検査なんて僕が全部出来るから、君は診察時間外に僕のクリニックまで来てくれるだけでいいよ。』と言ってくれた。しかし、後でローヤーに確認した所、生憎このチェックには、移民局指定のドクターが決まっているという。がっかりだ。

 

 そうして最終的に選んだ場所は、『サンフランシスコの中でも一番料金が安い』とティファニーが紹介してくれた、チャイナタウンにある小さな中国系のクリニックだった。

ミュニに乗って、彼女から渡されたメモを頼りにそのクリニックを目指して行く。
さすがにチャイニーズの彼女の紹介、目的地の近くまで来ると、ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, チャイナタウンそこはもう全くの『中国』だった。

様々な国からの移民が集まり、各々に特徴あるコミュニティーをつくっているここサンフランシスコの街。このチャイナタウンを始めとして、イタリアンタウン、ジャパンタウン、そしてリッチモンドの方に行くと、ロシア人が沢山住む地区があったりして、行く場所々で気軽にミニ世界旅行気分を楽しめる。

今日も道中、ダウンタウンの『メイシーズ』の前でストックトン・ストリートを通るバスに乗り換えた途端、そこからは一瞬にして、白人の社会から『中国』へと飛ばされた。

言わずもがな、このストックトン・ストリートの先はチャイナタウンへと続いている。その為、ここを通るバスの乗客の大半は中国人に占められていて、車内では中国語が大声で飛び交い、バスに乗っている白人といえば、殆どが観光客くらいのものである。
普段、サンフランシスコの街中を走る国際色豊かなバスの中とは確実に雰囲気も違い、なんとも、アジアの生活感にどっぷり浸された車内の空気だったりする。

 

 目指すクリニックのロケーションは、もうあと数ブロックでチャイナタウンの外れに差し掛かろうとする場所にあった。

ごみごみした忙しいチャイナタウンとスマートなノースビーチの分岐点に位置し、そこでは、アジア情緒溢れる『中国』に加え、『イタリア』からの姦しい空気もミックスされて流れて来る、ちょっと変わった街の風景が描き出されブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, チャイナタウンていた。

干した乾物やら、見た事もない食べ物でごちゃごちゃに埋まった長い長い商店街を通り抜けると、次のブロックからはもう、お洒落なテーブルを歩道に並べるイタリアンレストランが続いている。

そこからダウンタウンの方に目をやると、霞の向こうに高層ビルの山が見える。

カラフルに連る建物の並びの向こうには、銀色に輝く巨大なベイブリッジが、真青なサンフランシスコ湾を背景にしてのぞいている。

世界中の色んな物を少しづつ寄せ集めて作られた欲張りな景色。
まるで突然、玩具箱の中にでも迷い込んでしまったような不思議な錯覚を感じる。

 

 さて、そんな風景を観光客気分で楽しみながら、ついにクリニックまでたどり着く。
何やらわけの分らぬ中国語のお知らせがべたべた貼られたドアを押して、恐る恐る中に足を踏み入れてみる。
やっぱりそこも、ご期待に漏れる事はなく、中国一色に染まっていた。

壁にあるポスターは、もちろん全て中国語。そこには白人の姿なぞ一人もなく、私のアジア人の外見のせいか、受付のカウンターでも当然のごとく中国語で話し掛けられてしまう始末。
うーん‥。まあこれはこれでなかなか新鮮な気分ではある。

しかし、浮かれるのも束の間、何とかカウンターにチェックインが成功した後は、これまた予約を入れていたにも関わらず、当然のごとく、そこで二、三時間の待ち時間を言い渡された。
しつこいようだが、さすがに中国だったりする。

この長い待ち時間。
中国語のテレビが喧しく響く待ち合い室で、まるで喧嘩をしながら怒鳴りあっているような中国人のオバさんたちの世間話を隣にただぼーっとそこに座っていても仕方がない。
一通り中を見て回った後は、一声カウンターに声をかけ、さっさと建物を抜け出して、さっき見たイタリアとの国境にあった公園で日光浴でもしながら時間を潰す事にした。

 

 外の空気を一息吸うと何だか気分もほっとした。
公園に向かって歩きながら、大きな深呼吸を繰り返す。強いアクセントの中国語に二日酔いして痺れた頭が、やっとピンとリセットされた。
頭の上には雲一つない空がどこまでも気持ちよく続いている。今日もいい天気だ。

昼下がりの公園では、人々が思い思いにお日様の光を楽しんでいた。
こんもりと繁る緑があちこちに優しい木陰を落としている。

日溜まりの芝生の上にぱりっとしたレジャーシートを広げてピクニックを楽しむブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, ノースビーチ, 公園, 教会, ワシントンスクエア, 昼下がり, ひなたぼっこ子供連れのファミリー。その横では、大胆な格好をした若者達が、まるで公園の芝生をビーチか何かと勘違いしているように並んで寝転び日光浴を楽しんでいる。木陰のベンチにはお年寄りの社交場ができていて、ひとなつっこい犬たちを連れたハイカラなご老人たちが、新聞や本を片手にのんびりと会話を楽しんでいる。
早速私も耳にウオークマンのイアフォーンを突っ込むと、ごろんと芝生に横になった。

目の前が一面ブルーに染まる。
思いもかけずにこうして突然どこまでも澄み渡る空に向かい合ってしまうと、そのまま自分の存在が、遥か遠くの青のスクリーンの中へと吸い込まれて行く心もとなさを感じた。

青臭い芝と土の匂い。小学生の頃に行った遠足の記憶がよみがえる。
顔に当たるお日様の匂いに、陽にほした布団にくるまって眠る幸福な気分を思い出す。
『そういえば、最後にベッドでお日様の匂いを嗅いだのは何時だっけ?』
閉じた瞼の裏側に、忘れていた記憶のドアが開いて行く。

 

 ‥どれくらいそうして時間の隙間を漂っていたのだろう。ウトウトしかけた目の前に、突然ぬっと、大きなレトリバーの鼻先が現れた。
その毛むくじゃらで『ど』アップのいたずらな顔に、感覚のピントが集中する。一瞬おいて、思わずプーッと吹き出した。

フワフワと宙を漂よっていた気分が一挙に現実に掴み戻される。
さっきからそこらを走り回っていたそのやんちゃ坊主は、仰向けになって空を見詰めたままビクリとも動かない私を見て死んでいるとでも心配してくれたのだろうか。私が芝生から背を起こすと、またフリスビーをくわえて向こうの方へ駆けて行った。

 ハッとして時計を見ると、時間はもう、いつの間にか二時間程過ぎていた。そろそろ私の順番がやって来る。
プルプルと頭を振って服に付いた芝生を払うと、また中国に戻って行く腰を上げた。

 

 いよいよチェックが始ると、看護婦から、このグリンカードの申請をする全ての項目にパスするには、いくつもの予防接種や検査を何日かに渡って受けなければいけないということを告げられた。
もちろん、HIV検査もお約束である。

健康診断なんて、最後にそれらしい物を受けたのはもう学生時代の話である。
その後社会で接待だ何だと飲み歩いたツケが回って来たのか、私の身体にも、もうあちこちガタが出てきている様子だ。今回改めて受ける検査にもしっかりその影響はでたようで、検査の過程も思うようにスムーズには進んではくれなかった。

薬を腕に皮下注射して、その反応の大きさでレントゲンを撮るかどうかを決めるスキンテストでは、何と、思いっきりの陽性反応が出てしまい、しっかり漏れなく胸のレントゲンまで撮られる羽目となった。
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『ガンかもしれない』などと脅かされ、次の日にまた再度レントゲンを撮られることになった。

結局三度めのレントゲンの後、間抜けな事に、何とその陰の正体というのが『乳首』の陰だというのが判明した。
うーん、さすがに中国侮れない‥。

お陰様で、神経はすり減り、レントゲンの余分な費用でお財布もしっかりすり減って、全く『お願いしますよ』と一言ぶちかましたくもなる状況の中、このおとぼけメディカルチェックは終了した。
まあ、色んな阿呆らしい回り道もしたけれど、今では全てOKである。やっとドクターの書類がおりた時には心からホッとした。

 

 全ての検査が終了すると、受付で看護婦から書類一式の入った封筒を受け取った。そこには厳重に封印が押してある。

「移民局に出す前にその封を開けてしまうと、書類は全部無効になっちゃいますからね。」

やっぱりここは中国、最後まで気は抜けない。

 

 はてさて、最後に何やらそんな浦島太郎の玉手箱のようなお土産を頂いて、今回の『中国訪問』には無事幕を下ろされた。
これでまたひとつグリンカードに近付いた。

次から次に、こうしてわけの分らない事ばかりに振り回される戸惑いだらけの毎日だけれど、時間が経って振り返れば、こんな時の欠片たちも楽しい思い出に変わっていたりするのだろうか。

今起こる一つ一つの物語が、未来の思い出を刻んで行く。

 


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[2012/03/29 12:09] | エピソード | トラックバック:(0) | コメント:(0) | page top↑
エピソード11
 七月四日陰独立記念日。
インディペンデンス・デイの夜、ベイエリアでは、それを祝う花火があちこちであがる。


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 本来ならこの独立記念日のホリデイは、お猿はフレッドと過ごし、私はメイのパーティでクリスが誘ってくれた彼のファミリーバーベキューへおよばれの予定だった。

しかし当日の朝、お猿の用意も整ってフレッドのお迎えを待っていた所に、相変わらず気分屋の彼から突然のキャンセルの電話が入って来た。

この土壇場の予定変更‥。お猿には悪いが私は困った。

それならそうと、フレッドももう少し早めに連絡をくれていたなら、こちらも前もってベビーと一緒に楽しめるホリデイプランをたてる事が出来ていたものを‥。今さらクリスのパーティーには、家族も集まる、増してや初めてのおよばれに、まさかまさかの小さなベビーをつれて行くわけにもいかない。
普段からお互いの生活のスレ違いでそれ程頻繁に会うことも出来ない久し振りのクリスとの約束。楽しみにしていた予定がこうしてまた潰れて行く。

色んな思いがごちゃ混ぜになって、沸点に達したアドレナリンが頭の中で炸裂しそうな思いの中、‥しかしまあ、何時までそうして嘆いていても状況が変わってくれるわけではない‥。泣きたい気分をぎゅっと押さえてクリスのクリニックの番号を押した。

 

 「それなら、フィッシャーマンズ・ワーフの花火大会に行こう。」

沈んだ私の声を遮るように、電話の向こうからは、クリスの弾んだ声がかえってきた。

「今日のバーベキューは、ママの友達も集まって大人中心のパーティーになるからね。ね、それならいっそバーベキューは彼等に任せといて、僕達はベビーを連れて三人で花火大会を見に行こうよ。」

思わぬ話の展開に、とっさに返す言葉が浮かばない。その一瞬の沈黙に、クリスの声のトーンが下がった。

「会いたいんだ‥。」

微かにかすれた声が、受話器を通して耳に響いた。

クリスのまっすぐな言葉に落ち込んでいた気分も吹き飛んで、息も止まるようなあったかな感覚が身体中の毛穴から湧き出て来る。‥しかしその裏でジンワリ、すまない思いも沸いて来た。

「家族とのバーベキューなんて何時でも出来るけど、フィッシャーマンズ・ワーフの花火大会にキュートなレディーを二人もエスコート出来るなんて、こんなチャンスはめったにあるものじゃあないからね。」

私の懸念をキャッチして、電話の向こうからはすぐにクリスの『ノー・プロブレム』と戯ける様子が伝わって来た。弾んだ声が心の負い目を吹き飛ばす。

「クリニックの仕事が終わって、五時には迎えに行くよ。寒いからね。ベビーに沢山服着せて待ってて。」

 

 五時きっかりに、クリスのお迎えを告げる部屋のインターフォンが鳴った。
大きなカーシートと、ベビー御用達品がパンパンに詰ったママさんバックを両手に抱え、その上にお猿を乗せたストローラーを押しながらロビーまで下りて行くと、

「ハイ、ママサン!」

勇ましい私の姿にウインクをしながら、車の外で私達を待っていたクリスが戯けてドアを開けてくれた。

 

 フィッシャーマンズ・ワーフに着くと、さすがに今日は蟹のバケツをひっくり返したようなお祭り騒ぎで人が溢れ返っていた。普段はただ、海に面してのんびりとした時間が流れる芝生の公園が、今日は見渡す限りの人・人・人の頭で埋まっている。ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, フィッシャーマンズワーフ花火、花火、独立記念日

そんな公園の小道をクリスと二人、お猿のストローラーを押しながら、人ごみの中を満員電車にゆられるようにゆっくりゆっくり進んで行く。
人の流れにのって、これまた人がひしめき合って腰をおろしている芝生の観客席までやって来ると、そこでは日本のお花見よろしく、早い時間からシートを広げて場所を確保していた人たちの姿もちらほら見えた。

芋を洗うように混合うシートの隙間に何とか二人と半分が坐れる場所を確保すると、まずはお猿のストローラーをどんと置き、後はその横に空いた一人と半分のスペースに、クリスとぴったり身体を寄せ合って腰を下ろした。
ここまで来ると一安心。
後はビールを取り出して、ショーが始まるのを待つだけだ。

空気が少し冷えて来た。
いつもは近い海岸線が今日はやけに遠くに見える。
青い海をバックに組まれた巨大な野外ステージから響く大音響のロックのリズムが、ショーが始る幕前の会場の雰囲気をブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, フィッシャーマンズワーフ花火、花火、独立記念日盛り上げている。

ほどなく日が落ち始め、辺り一面の風景が黄金の光に染まって来た。

‥とその時、ふいにドラムが合図を打ち、ステージの上からボーカルが群集に向かって何か大声で声をかけた。
それをキューに、そこら中に座り込んでいた数えきれない人の山が一斉にステージに向かって立ち上がる。
間を置かずしてアメリカ合衆国の国歌が流れ、皆がひとつになって斉唱を始める。

さすがにスピルバーグを産んだアメリカン・ショー・ビズの世界。
セピア色に輝くスクリーンの中で、そこにある全ての物たちがこうして一瞬にして一枚の素敵な絵を描き出す演出のクールさには、もうただただ感動の一言!

 

 辺りの景色が闇に沈み、遠くのレストランの窓に柔らかな明かりが灯される頃、目の前に広がる暗い海に一発目の花火が打ち上げられた。

耳を劈く炸裂音と共に、ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, フィッシャーマンズワーフ花火、花火、独立記念日強烈な歓声や口笛があちこちにこだまする。

それまでストローラーのベルトを止めたり外したり勝手な事をやって遊んでいたお猿も、突然頭の上に飛び散った色とりどりの光の粒に驚いたようだ。
急いでママの膝によじ登ると、それからは大人しく腕の中で、次々に上がり続ける花火にその小さな手をパチパチ夢中でたたき続けた。

日が落ちた後の海岸線は、指先がしびれる程に冷え込んで来た。
もう七月に入ったというのに、海から吹く凍り付く風に、鼻先が凍え目に涙が潤んで来る。

「ハ‥‥クシュン!」

思わずクシャミが出た瞬間、私の身体は腕に抱いたお猿ごと、ふうわりと大きな腕に包まれた。

パン・パ・パパーンッ‥パ・パ・パ‥!

花火が打ち上げられる度に、辺り一面明るく昼間のように照らされる。
鮮やかな閃光を放つ光の模様たちが空のスクリーンの上で軽快なリズムにのりながらダンスのショーを織り成していく。

腕の中のお猿の柔らかい髪の毛がモゾモゾ鼻に触れてくすぐったい。
トクン‥トクン‥。クリスの心臓の音が耳に響き、幸福な温もりのサンドイッチで、今まで凍り付きそうだった頬がほかほか溶けて行くのを感じた。

ゴールデンゲートブリッジの向こう側では、マリーンの花火があがるのが見える。
湾を挟んで競い合うように上がる花火を見ていると、ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, フィッシャーマンズワーフ花火、花火、独立記念日日本で行った下関の花火大会の風景が頭を過った。

浴衣、屋台、むせ返るような人々の熱気‥。
遠い遠い国の空。
全く異なる時間の流れの中で、今こうして同じ花火を見ている自分がいる。

『今頃、日本は早蝉の鳴き出す季節かしら?』

ふいにチュンと目頭が弾け、クリスの首に顔を埋めた。
そっと目を瞑ると、顔中の神経から柔らかな匂いと温もりが滲み込んで来る。
周りで炸裂する花火の音も、人々の馬鹿騒ぎも、過去の時間も何もかも‥、小さく小さくそこで脈打つ宇宙の中に溶けて行くような気がした。

 

 ショーがお開きになった後は、花火大会のお約束、また物凄い人の波にもみくちゃにされながら駐車場までのシャトルバスを捜した。
何しろ、ただでさえガタイのサイズの違うでっかいアメリカ人達の背中しか見えない『大海原』。お猿のストローラーに四苦八苦する私を見て、これまた目線が遥か高くにあるクリスが彼女の担当を変わってくれた。

ようやく大通りまで出て来ると、皆でオシクラまんじゅうをするように、押し合いへし合いシャトルバスに乗り込んだ。
クリスがひょいと、ストローラーの中から小さなお猿を抱き上げる。ベビー初心者の彼にとっては今日初めての『プレイ・ダディー』。なかなか新鮮な体験のようである。

言わずもがな、サンフランシスコはベビーにとっても優しい街。ベビーを一緒に連れていると、皆が親切に声をかけてくれたり、バスの混雑する車内でも先を争って席を譲ってくれたりする。

「今まで自分の人生の中で、人からこんなに優しい『待遇』を受けた事は無いな!」

今日、初めてベビーを抱いてバスにゆられてみた彼は、そんな周りの乗客たちの反応にしきりと感動しまくっていた。

帰りのシャトルバスの中では、偶然クリスの同僚のドクター夫妻に会った。
クリスが嬉しそうにその腕に抱いているお猿を見て、彼等は彼女をクリスのベビーだと勘違いした様子だった。

その時にはもうすっかり調子にのりまくりのクリス、別にそれを否定するわけでもなく『可愛いだろう?とってもいい子で、花火を見ても全然怖がったりなんてしなかったよ。』なんて、自分のベビーよろしく自慢話しなんぞ始めていた。

しかし、そこでアメリカ人のお約束、'how many months? と、ベビーの年を聞かれた途端、さすがの彼も『ウッ‥』っと答えには詰ったようだ。
シドロモドロの表情の中、思いっきり答えを本ママに振り、敢え無くシッポを出していた。‥お馬鹿なヤツ。

 

 瓢箪からポンッと駒が出た、今年のフィッシャーマンズワーフの花火大会。
来年もまた皆で来る事が出来たらいいな。

その頃にはまたこのサンフランシスコで、いったいどんなストーリーが展開していたりするのだろう。

 


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[2012/03/30 12:44] | エピソード | トラックバック:(0) | コメント:(0) | page top↑
エピソード12
 お猿が新しいデイケアに通い出した。


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今まで彼女はシェルターに紹介して頂いたチャイニーズのデイケアにお世話になっていた。
しかしダウンタウンでの生活が始まると、毎日そこまで通うのには少々不便となったので、先月の始めからこのアパートメントの周辺で新たなデイケア捜しを始める事にしたのだった。

働くママの溢れるサンフランシスコ。一口に『デイケア選び』と言っても、これがまたなかなか大変な物で、街にある殆どのデイケアはいつも当然のごとく満員で、通常はその長ーいウエイティングリストに名前を載せてもらい席が空くのを待つのが一般的になっている。
ここ暫くは、毎日朝早くからサター・ストリートにあるデイケア斡旋の事務所に通いつめ、そこに登録されているダウンタウン中のデイケアに片っ端から電話をかけまくる日々が続いていた。

そうして毎日、電話の向うから早口の英語で断わられ続けるのにも慣れっこになって来た頃、偶然ウチのアパートメントからそう離れてはいないファミリータイプのデイケアに、一つ席が空いているという情報が飛び込んで来た。
そのロケーションは、ケーブルカーが走るカリフォルニア・ストリートがレベンワース・ストリートと交差する辺り。お金持ちエリアのノブ・ヒルから少しだけ離れた、庶民的で閑静な住宅街といった場所である。
喜び勇んで早速その場で予約を取り付け、次の日に実際現場を見に行く手筈をとった。

毎日カリフォルニア・ストリートの坂を通うのはちょっと大変な気もするけれど、今のアパートメントからは歩いて三十分で往復できる。
坂の途中にはお寿司も売ってるスーパーもあったりして、毎日の丁度いいお散歩コースになりそうだ。

 

 次の日の午後、約束の時間ぴったりに、指定されたアドレスのドアベルを鳴らした。すると中から、すっぽりと頭からスカーフを被った美しい中近東の女性が顔を出した。ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, エジプト女性, ベール, 神秘的, ミステリアス, 坂井浩子, ひろこ, hiroko sakai, hiroko
何だかその『ハッピー・デイ・ケア』といったネーミングからはちょっと予期せなかった状況である。
いったいまず言葉が通じるのかさえも分からずに、このリアクションには一瞬困った。

しかし彼女も私を面接のママだと確認すると、すぐにその彫の深い顔に笑顔を浮かべながら、わたしをドアの中に迎え入れてくれた。

柔らかい絨毯に隅々まで覆われた広い部屋の中へ入ると、そこでは年の違った子供達が子犬のように遊んでいた。そして私が通された応接室のソファに腰を掛けるや否や、そのチビたちは入れ代わり立ち代わりこの『お客さん』のチェックにやって来た。

そうやって、がめ煮のような子供達の暖かい洗礼を受ける事しばらく、少し間を置いて、抱いていたベビーにミルクを飲ませ終えた奥さんのヒワイダがご主人のトムと一緒に部屋に入って来た。
彼等はエジプトから来ているご夫婦だという。
二人がソファに腰を下ろしお互いそうして向かい合ってみると、何だかその異質な雰囲気に少しの緊張を感じた。

まるでアラビアン・ナイトのストーリーから抜け出たようにスカーフで頭を覆ったヒワイダからは、中近東の女性の神秘的な香りが漂って来る。
その横に座るトムはといえば、これがまた何だか爆発したような白髪頭で、どことなくアインシュタインを思わせる少し天然ボケの入った陽気なおじさんだ。

今まで経験した事のなかったエキゾティックな空気がビシバシ漂う空間の中で、これまた美味しいのか不味いのか、ちょっと答えに困るような不思議な味のお茶を頂きながら、ブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト,エジプト, エジプトお茶, お茶 早速話が始った。

しかし、またここでもう一山。

話といっても、最初はお互いにフレンドリーな笑顔で挨拶を交しなぞするものの、彼らが話す恐ろしく巻舌のアクセントがかかった英語に加えて私のあんまりお薦め出来ない英語力である。
暫くは会話の歯車も素晴らしくずれあって、なかなか言葉のキャッチボールも的確に相手に届く事がなかった。

まあそれも、そんな状況には慣れっこの外国人同士、ここは粘りが勝負である。
お互いそうしてトンチンカンなやり取りを繰り返す内、難解な会話の流れの中にも『コツ』というものが掴めて来た。

結局そうして、めでたくお猿はその二週間後から、この何ともエキゾティックなデイケアに受け入れてもらえることになった。

 

 全ての書類にサインを終えて部屋の中をぐるっと見回してみると、そこでは何人かのエジプト人の子供達が、やんちゃな虎の子のようにじゃれ合うベビーの世話をしているのに気がついた。

皆、お人形さんのように整った濃い顔立をしている。

「みんなウチのキッズ達だ。」

そんな彼らに目を取られる私に、トムが誇らしげに笑って言った。
‥やっぱり中近東の家庭はすごい。子沢山な彼等には感心してしまうやら羨ましいやら。

そこにいる一番上のお姉さんはもう高校生位の歳で、頭から被った黒いスカーフの下からは薄っすらと化粧がなされた綺麗な顔がのぞいている。
どうもこの一歩ずれたコメディアンのようなトムから同じ遺伝子を貰ったとは想像するのに困る美人さんブログ, エッセイ, シングルマザー, 海外生活, 人気のブログ, 注目のブログ, 話題のエッセイ, カリフォルニア生活, アメリカ生活, ノンフィクション, 現代画家, 人気, アーティスト, サンフランシスコ, フェースブック話題の人, 話題の人, 海外の日本人アーティスト, エジプト, デイケア, 外国で子育て, アメリカで子育てだ。

その下に、これまた信じられない程長い睫毛のおシャマな女の子が二人いる。
それから少しシャイで、濡れるような真っ黒な巻き毛の男の子が礼儀正しく顔を出し、最後に一番下のチビチャンは、まだお猿と同じくらい小さくて、そこで預かっている子供達と一緒によちよち部屋の中を歩き回っている。

皆、ーその一番下のベビーはまだ無理だとしてもーよくお手伝いをしているのは感心だ。

トムの横で、スカーフの下からどっしり穏やかに微笑むヒワイダはとても美しい女性だった。
そんな彼女を見ていると、少なくともこの美しい子供達の『外見』の遺伝子に関しては、どう言うわけだか、皆、この母親から流れて来てしまったのだろうという答えに行き着いた。

もちろんこれはオフレコで。
トムには殴られてしまいそう。

まあそんな冗談は横に置いて。
私はヒワイダの、外に向かう白人女性とは対照的な、その内にある女性の芯の強さが映る瞳が好きだった。まだ少なからず男尊女卑の残る中近東の風習の中で、夫に従いながらも妻として母として、家族を守って行く女性としての静かな自信が、その穏やかに微笑む笑顔には満ち溢れているような気がした。

今でも世界情勢の中では、中近東の女性差別が問題に取り上げられて来る。それについてはお恥ずかしながら、正直今、ここでどうこう意見を述べるなんていう立派な脳ミソは持ち合わせてはいない。
しかし、こんな風にこのファミリーを目の前にしていると、そんな独特のシステムに縛られた世界も実際に中に入って面してみれば、外から見ただけでは分らない、その文化や歴史に適した男女のバランスという物があったりするのだろうと感じさせられた。

トムのあっけらかんとした陽気さと、ヒワイダのどっしりとした優しい羽の下で、沢山のベビー達が巣立って行く、その名前の通りの『ハッピー・デイ・ケア』。
彼らとの出合いに大きな幸運を感じた一日だった。

 

 とにかくまずは、トムと子供達の遺伝関係なぞ心配する前に、ウチのお猿の心配である。
この『人種のサラダボール』サンフランシスコの街でこれから育って行くお猿さん。
アメリカ人のパパに日本人のママ、中国社会からエジプトに運ばれて、なかなかこれからの一筋縄では行かない彼女の人生が今から暗示されているようである。

そんな彼女も今の所、とりあえずスクスク元気に育っている。

21才になった時に彼女が出す答えに今からわくわくしながら、このシングルマムライフ『テイク・イット・イージー』、考え込まずに進んで行こう。

ずっと昔に見た映画、ベッド・ミドラーの『ステラ』。
お猿と私の間にも、いつの日かそんな物語りが産まれて来たりするのかしら?

 


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[2012/03/31 10:30] | エピソード | トラックバック:(0) | コメント:(0) | page top↑
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